「ラグビーの聖地・花園。高校時代は誰もが目指しているこの花園で、素晴らしい雰囲気の中、ラグビーができて楽しかった」埼玉ワイルドナイツのキャプテン・坂手淳史選手がそう振り返ったリーグワン第2節、花園近鉄ライナーズと埼玉ワイルドナイツの一戦を振り返ります。

 前半は、詰めかけた7000人を超えるラグビーファンを熱くする白熱の展開となります。両チームの選手が体をぶつけあう音が聞こえてくるほどの肉弾戦。有名選手をずらりと並べて多彩な攻撃を繰り出すワイルドナイツに対して、ライナーズは強い当たりと鋭いタックルで対抗。開始早々に、ワイルドナイツに1トライ(5点)こそ許したものの、その後はフィジカルを前面に押し出してペースを握ります。そして、30分すぎには、センターのステイリンパトリック選手がインゴールに飛び込みます。しかし、TMO(ビデオによるリプレイ検証)の結果、ノックオンとなって無情にもノートライ。同点、逆転の絶好のチャンスを逃します。逆に、ワイルドナイツは前半終了間際、ライナーズ陣内に攻め込むと、ここぞとばかりにFW陣が集中。スクラムを押し込んで貴重なペナルティーを奪います。このPGのチャンスをSO松田力也選手がきっちりと決めて8対0、リードをひろげて前半を折り返します。

 迎えた後半。リザーブに名を連ねていた代表選手を次々と送り込むワイルドナイツ。1人1人がより強いヒットと技術レベルの高さを見せて一気に突き放します。後半開始3分、途中出場の長田智希選手が鮮やかステップを見せてトライを奪うと、さらに1トライを加えた後の17分、今度は前半途中から交代で入ってスクラムでの存在感を示していたヴァルアサエリ愛選手が、FW第1列とは思えない俊敏さを見せて中央にトライ。そして23分には、坂手選手に代わってフッカーの位置に入っていた堀江翔太選手が、ゴール前のモール攻撃をうまくコントロールして自らトライ。選手層の厚さをまざまざと見せつけて、その後も確実に得点を加えた埼玉ワイルドナイツ。49対0で花園近鉄ライナーズを下し、開幕2連勝を飾りました。

 高校時代の恩師や両親が見守る中、さすがの活躍で花園での雄姿を披露した堀江選手は「高校時代のあこがれの地で、(最後のシーズンに)両親が見ている目の前でトライがとれてよかった。残念ながら高校時代はここに来ることができなかったですが、それがすべてではない。強豪校じゃなくても次のステップアップがあるし、花園に出られなくても次に花を咲かせる場所はある。(高校生たちには)夢を目指して頑張ってほしい」そう話すと「とにかくファンの方にはラグビーを楽しんでほしい。見て楽しんでもらえるようなゲームをラグビー選手として常にしたいと思っている」と言葉を残しました。

 埼玉ワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督が「ラグビーの(あらゆる要素)すべてが詰まっていた」と語った花園近鉄ライナーズと埼玉ワイルドナイツの熱闘。点差以上に濃い内容は、試合後、挨拶に訪れたライナーズの選手たちを暖かい拍手で迎え入れたファンの姿が物語っていました。


(MBSスポーツ解説委員 宮前 徳弘)