衆議院会館の部屋に入ると、まず目に飛び込んできたのはホワイトボードにびっしりと書かれた「政策」だ。農水産物の輸出「1兆円」を維持するための政策や、近い将来起こるとされる「南海トラフ地震」への備えとして「災害対策」「国土強靭化」と言った文字が躍る。いずれも、自民党の後藤田正純衆院議員の地元である徳島県が直面している問題だ。「県民が誇りを持てる徳島県にしたい」後藤田氏はそう熱っぽく語った。
"19年の在任期間"飯泉知事は「6期目」への態度を明らかにせず
来年春に投票が行われる徳島県知事選。現職の飯泉嘉門知事は現在5期目で、19年余りにわたり徳島県政のかじ取りを担ってきたが、6期目の立候補については態度を明らかにしていない。10月14日の会見で"進退"について問われると「現職としてやるべきことがある。次の事より今与えられた職務に全力で取り組む」と明言を避けた。
最近では、特別交付金を不当に減額されたとして、つるぎ町など3つの町が徳島県に対し1億1500万円の損害賠償を求める訴えを起こした。つるぎ町の兼西茂町長は「これは飯泉知事の意向が入っとるんですよ」と、選挙などで飯泉知事と対立する立場だったことから交付金を減額されたと訴えている。飯泉知事は「事務的に配布しており、質問にも真摯に回答している」としているが、多選を含め県政運営を批判する声は多い。
「一歩先の日本を徳島から実証する」後藤田氏が知事選に関心示す
後藤田正純氏も飯泉知事の多選を批判する一人だ。10月12日に衆院会館で話を聞くと「長期政権における不条理な状況を変えていきたい」と強調した。さらに「一歩先の日本を徳島から実証する」としたうえで「20数年の政治家経験のすべてを徳島再生に注ぐ覚悟はある」とその意気込みを語った。"ふさわしい人がいなければ"という条件付きながら、徳島県知事選に関心を示した格好だ。
当選8回を誇る後藤田氏だが、昨年の衆院選では無所属の仁木博文氏に選挙区(徳島1区)で敗れ、からくも比例四国ブロックで復活当選した。後藤田氏は「多選知事のもと"なれ合い県政"が続いた」と徳島県政を真っ向から批判したため、選挙に先立つ6月、自民党徳島県連は「根拠のない発言を繰り返し"イメージを傷つけられた"」として、後藤田氏を公認候補としないよう党本部に申し入れるなど、地元での対立が際立っていた。(その後、党本部は後藤田氏を公認)
選挙で辛酸を舐めた後藤田氏だが、最近は金沢を訪れ、2021年の石川県知事選で勝利した馳浩知事にアドバイスを求めたといい、虎視眈々と出馬の機会をうかがっているようにも見える。
自民・三木亨参院議員も出馬に"意欲を滲ませる"
10月15日には、自民党の三木亨参院議員も出馬に向け意欲を滲ませた。三木氏は、現在2期目で、前回の選挙(2019年)では徳島と高知の選挙区が合区となったため「特定枠」での処遇となっていた。MBSの取材に三木氏は「徳島に今一度、活力を取り戻したい。そのために出来ることに全力を尽くしたい」と語った。来春の徳島県知事選はどのような「顔ぶれ」になるのか...水面下での駆け引きが激しさを増しつつある。
毎日放送報道情報局 解説委員 三澤肇