伊丹空港すぐそばの公園「伊丹スカイパーク」。人々の間近をジェット機が大きなエンジン音を上げ飛び立っていきます。公園と滑走路の距離はわずか200m。飛行機の離着陸を大迫力で楽しむことができます。子どもはもちろん大人も熱い眼差しを向ける、そんな伊丹スカイパークのゴールデンウィークの1日を定点観測しました。
午前7~9時は絶好のシャッターチャンス!?「こんなに近くで飛行機を撮れる場所はない」
「昭和の日」の4月29日。午前7時、地元の人が散歩を楽しむ中、朝からカメラを構える男性(63)がいました。
(航空ファンの男性)「(Qなぜこんな朝から?)午前7時から9時の間が、飛行機が一番密に飛ぶので。羽田便とか、大きい飛行機も多いし」
両手に大きなカメラを持っている男性。空港近くに住んでいて、朝早くの便を撮影するために公園を訪れたといいます。午前7時台は伊丹空港から各地へ25機ほどの飛行機が飛び立つため、滑走路は混雑しています。
男性は10年前、自衛隊のブルーインパルスに魅了されて飛行機の写真を撮るようになったといい、カメラ教室で腕を磨いて写真を撮り続けているということです。
(航空ファンの男性)「よく行くのは、羽田空港、セントレア(中部国際空港)、福岡空港、那覇空港。こんなに近くで撮れるところは、なかなかない。それが伊丹空港の大きな魅力です」
日々、伊丹スカイパークに足を運び、伊丹空港の様々な表情を記録し続けています。
噴水や遊具もあって家族連れにも人気 エンジン音を聞きながら英語の勉強をする子どもも!?
午前9時、航空ファンだけではなく家族連れもどんどん公園にやってきました。
伊丹スカイパークは2006年にオープン。ターミナルの反対側の滑走路に沿って、約1.2kmの公園として整備されています。噴水や遊具なども設置されていて、週末には多くの家族連れや観光客が訪れます。
親子3世代の6人でやってきた家族は、2歳の双子が飛行機が好きで東京から見に来たそうですが、エンジンの音が怖くて泣いてしまいました。
飛行機が轟音を立てて飛び立つ傍ら、いすに座りえんぴつを走らせる子どもたちの姿も。大好きな飛行機のエンジン音を聞きながら、連休明けの英語のテストの猛勉強中です。
(中学2年生)「家だとテレビがあるのでそっちに集中してしまうので、テレビがない方がやりやすい」
飛行機を撮るのを忘れて雑談も…スカイパークで知り合った“航空ファン仲間”
午前11時、飛行機を見ながら指をさしている夫婦がいました。
(夫婦)「(Q何をされている?)息子のお見送りです。(息子は)横浜に住んでいて、実家がここ」
横浜に住む息子が、結婚後、妻を連れて初めて帰省し、前日には妻の誕生日をお祝いをしたそうです。
(夫婦)「(息子の)ちょっと違う一面みたいなものも見えたり。今まで私たちに見せなかった感じのところも見えたりして…優しいところとかいろいろ」
夫婦が手を振る先に見える飛行機は、息子の妻の実家がある大分へ飛び立ちました。
一方、飛行機を見ながら楽しげに盛り上がる大人たち。声を掛けてみたところ、伊丹スカイパークで出会った航空ファンの仲間たちだということです。
(航空ファンの男性)「この公園で知り合いました。カメラを置いてしゃべっている間に、(飛行機が)行ってもうた~ってことが多いです」
(航空ファンの女性)「これはあるある。(Q何の話をする?)飛行機とは全然関係のない話。もう本当に雑談ですよ。『ヤマザキのパンのシールがあと何点?』とか」
子どもの頃から伊丹空港に慣れ親しんできたというこの女性。「以前は飛行機の数が今よりも多かった。大きい飛行機もジャンボ機も当たり前で、いろんな色のいろんな国の飛行機が離着陸していた。今はさみしいですね」と語ります。
伊丹空港は1939年に開港。西の空の玄関口として国際線の便が多数往来し、二階建てのジャンボ機も見ることができました。1994年に関西空港が開港してからは国内線のみとなり、現在は中型機や小型機が多く飛ぶ空港となっています。
(航空ファンの女性)「親が管制官だったので、国際線があった時は空港の向こう側に住んでいて、空港の屋上が遊び場だったんです」
子どもの頃の思い出がたっぷり詰まった場所。時間があれば顔を出すのが日課だそうです。
30年来の航空ファンが語るオススメ飛行機は「B787」「天草エアライン」「A350」
午後になっても様々な種類の飛行機が飛んできて、そのたびに航空ファンがカメラを向けます。ファン歴30年の2人に、伊丹空港のおすすめ飛行機を紹介してもらいました。
【B787】
「ANAがボーイングと共同でつくり始めたので、よく『準日本製』と言われます」
【天草エアライン】
「天草はイルカが有名で、イルカの塗装をしたかわいい機体。唯一の、1機しかない飛行機です」
【A350】
「コックピットの周りが黒いマスクみたいで、かわいいなと。『タヌキ』って言われています。タヌキ顔」
雨の日は“着陸時の水しぶき”を撮るチャンス!
午後3時、天気が悪くなり、家族連れはみな帰宅の準備を始めます。航空ファンらも帰るのかと思いきや、公園内にある着陸の様子がよく見えるエリアへ。
(航空ファン)「雨の日の楽しみがあるので。もっともっといっぱい雨が降ってくれると、着陸時の水しぶきが楽しいので、それを撮っています」
男性に力作を見せもらいました。写真では、着陸の際にエンジンの勢いで水しぶきを上げる光景をとらえています。離陸する際も、跳ね上げた水しぶきに包まれながら飛び立って行きます。
“空の旅”に思いをはせる人たち…家族旅行を夢見る家族、連休をうらやむ夫婦
傘をさして飛行機を眺める家族もいました。
(孫)「最近、おばあちゃんの足の調子があまりよくなくて、でもどこか一緒に出かけたいなと思って、ここなら車でも行きやすいと思ってきました」
(祖母)「私も飛行機に乗りたいな~」
以前は海外にも行くほど旅行好きでしたが、今は足の調子が悪いので旅行に行くことができないということです。飛行機を眺めながら、また一緒に旅行に行く日を夢見ています。
(祖母)「以前、旅行に行ったときのことを思い出します」
(孫)「昔一緒に2人で北海道に行ったことがあるので、また行けたらいいなと思うんやけどね。家族旅行が大好きな一家やったんで」
また、大空を見上げている夫婦も、空の旅に思いをはせています。
(妻)「(Q何連休ですか?)休みはきょうだけです」
(夫)「『10連休の人はいいな』と思いながら」
(妻)「あっ、ゴールデンウィークや!忘れていました」
(夫)「飛行機に乗って、おじいちゃんおばあちゃんのところに行って、飲み食いして遊んで帰るんやろなと。うらやましい」
ついつい本音が漏れました。仕事は夫婦そろって介護関係だそう。しばらくの間、静かに飛行機を見つめていました。
(妻)「またあしたから頑張ろうと思って見ています」
飛行機やターミナルビルが光る幻想的な夜…雨の日はよりキラキラした光景が
午後7時、日が暮れても滑走路には多くの飛行機が。ターミナルビルや飛行機に明かりが灯り、幻想的な光景を作り上げます。
(公園を訪れた人)「きょうは雨が降っているので、いつもよりキラキラしていてすごくきれいです」
この日も無事に運航を終えました。旅立つ人、旅を夢見る人、多くの人の思いを乗せて、飛行機はきょうも伊丹の空を羽ばたいていきます。