5月7日、今国会での「子どもの貧困対策法」の改正を求めて、超党派の「子どもの貧困対策推進議員連盟」と、子ども・若者の貧困対策に取り組む5つの団体が緊急の集会を国会内で開きました。

 「子どもの貧困対策法」は2013年に成立し、2019年に初めての法改正が行われ、2024年は本来ならば5年ごとの見直しの年になるはずです。

 しかし、今国会では、少子化対策の支援金制度を盛り込んだ「子ども・子育て支援法」の改正案や、子どもの性被害防止のための「日本版DBS制度」の導入といった重要審議が行われており、経済的に困窮する子どもたちについて関心が薄れていると関係者は危機感を覚えています。

 一方で実態は、コロナ禍とその後の物価高騰の影響を受け、困窮家庭の状況は年々厳しさが増しています。帝国データバンクによりますと、2024年4月は1回あたりの平均値上げ率は約23%、「加工食品」の値上げが2000品目を超え、中でもハム・ソーセージが一斉に値上げされました。物価の優等生と言われていた卵に続いて、もやしですら値上げされており、食卓を直撃しています。今後も物価高騰要因として原料高や円安が懸念され、日々の暮らしが楽になる気配はありません。

米など主食買えない“ひとり親”の割合が大幅増

では、困窮家庭の実情はどうなのでしょうか?NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」が、食料支援を行っているひとり親3219人を対象に行った調査(2024年3月2日~5日)によると、現在の暮らし向きが「苦しい」「やや苦しい」と96%の人が回答しています。

 また、立教大学の湯澤直美教授が、今回の調査とコロナ禍の2021年3月に行われた調査を比較したところ、以下のような結果になりました。

●「米などの主食が買えなかった」ことが
 「よくあった」「ときどきあった」

 ・2021年→東京:30.6% 東京以外:41.6%
 ・2024年→全国:65%

●「肉や魚が買えなかった」ことが
 「よくあった」「ときどきあった」

 ・2021年→東京:55.2%・東京以外:51.6%
 ・2024年→東京・東京以外:85%

“過酷”な現状に耐える親子の姿「体鍛えなきゃと寒さ我慢」食べ盛りなのに…「朝を抜いて昼は給食頼り」

この調査に寄せられたコメントからも、

・あらゆる物が価格高騰して困っている。子どもが霜焼けになっているが、体を鍛えなきゃと寒さを我慢したりしていると切なくなる。免疫を付けると言って、薬を買わないでいいなどとも言っていた。
・食べ盛りだが、米が足りないため、朝を抜いて昼は給食頼り。
・削れるのは食費と衣類品なので、3食は食べさせてあげられなくて。子供の靴が買えず穴あきのまま…。
・冬場は電気代が高くなるので、家では厚着をして過ごしています。トイレは毎回流さずに何回か溜めてから流しています(泣)

など、過酷といっていい現状に耐える親子の姿が伺えます。これからやってくる酷暑の夏に備えて、子どもが安全に過ごすための対策は緊急課題です。

 今回の集会で支援団体は、「こどもの貧困対策基本法」改正において、子どもの貧困を「対策」ではなく「解消」することを目的とするよう強く要望し、法律によって「包括的かつ早期に支援の施策を実施」を推し進めて欲しいと、参加した国会議員に訴えました。

 一方、超党派の「子どもの貧困対策推進議員連盟」の田村憲久会長は、すでに議連として「子どもの貧困対策推進法」から「子どもの貧困の解消に向けた対策推進法」へと名前を変更することで法律の目的を明確化させるなど改正案をまとめ、これから各党に持ち帰り党内手続きを進めることを報告し、「国会中に何とかこの法律が改正できるよう我々も汗をかきたい」と話しました。

 「今国会は重要法案が目白押し」はあくまで大人の事情で、暑さ寒さや空腹に耐える子どもをどう救うのかは喫緊の課題です。今こそ政治の力が発揮されるべき時ではないでしょうか。