日本時間の5月15日未明、罪状認否のためロサンゼルスの連邦地方裁判所前に姿を現した水原一平被告は、報道陣からの問いかけも終始無言を貫いていました。ドジャース・大谷翔平選手の口座から約26億円を不正送金した銀行詐欺など2つの罪に問われています。水原被告は起訴内容について無罪を主張しますが、すでに水原被告は検察側との司法取引に合意。この日は形式的に無罪を主張したものとみられ、今後、有罪を認める見通しだということです。カリフォルニア州の弁護士資格を持つ村尾卓哉弁護士に今後の裁判の行方などを聞きました。スタジオ出演した元衆議院議員・豊田真由子さんからの「どうにかお金を取り返す方法がないのか?」といった質問にも答えていただきました。
◎村尾卓哉:国際弁護士 カリフォルニア州ニューヨーク州の弁護士資格を持つ 東町法律事務所所属 事業再生や行政訴訟などを扱う
◎豊田真由子:元衆議院議員 自民党議員時代は安倍氏と同じ派閥「清和会」に所属 東京大学法学部卒 厚労省在職中にハーバード大に留学
罪状認否のために姿を現した水原被告 報道陣の問いかけには終始無言
ーーーー日本時間の15日未明、ロサンゼルスの裁判所に水原一平被告が出廷、終始無言を貫きました。そして館内に入る前にベルトなどを外し、金属探知のゲートをくぐって裁判所内へ入館したということです。長い間ずっと報道陣が質問を投げかけていました。そのときの対応などを見ていてどのように感じましたか?
(村尾弁護士)「おそらく司法取引が成立した状態で、ここからやはり何か余計なこととか、メディアに刺激を与えるようなことは避けて、できる限り無言を貫こうという方針で、おそらく事前に弁護士と話をして臨んだのかなという印象を受けました」
裁判所は安全上の懸念を理由にメディアを別室に移動 音声のみの傍聴
ーーー今回の出廷のとき、通常なら報道陣は法廷の中に入れるのですが、裁判所側は開始30分前に安全上の懸念があり対応できないとして、集まったメディアは隣の法廷に移動させられ音声のみの傍聴に。これについて村尾弁護士は『審理の公開は被告側を守る権利で、法廷の秩序を乱さないために裁判官の裁量で決定したのではないか』ということですが、どういうことでしょうか?
(村尾弁護士)「多くの報道陣が詰めかけて、なかなか法廷内の秩序というか、静謐な中で審理をするというのが難しいだろうと。あとは警備上の都合でと裁判官がおっしゃっていたということですけれども、最終的に公開の法廷というギリギリのところを守りながら報道陣だけはちょっと横のところで音声でお願いしますと裁量で決めたんだと思います」
ーーー今後はどうなる?
(村尾弁護士)「次回以降も同じような形になるのか、もしくは事前に報道陣の数を制限するとか、そういう形でアナウンスするのかちょっとわからないですけれども。やはり異例の注目を集める事件ですので、裁判所側もかなりイレギュラーな対応を余儀なくされているのかなというふうに思います」
どうなる?支払うことになるのは合計約30億円
ーーー今後水原被告が支払うことになるであろうお金は合計約30億円と言われています。内訳は大谷選手の口座から不正入手したこの約26億円、これは後に大谷選手に返済すると言われています。他は追徴課税そして罰金として合わせて約3.8億円をアメリカの財務省に支払うということになります。このような金額は他では見ない?
(村尾弁護士)「個人の資産から取った額としてはもう前代未聞の額だろうと。集団でちょっとずつ100万円で何人もっていうのはあるとは思うのですけれども」
(豊田真由子さん)「到底、返済可能な額ではないじゃないですか?多少残っているとしても。それで私は大谷さんにお金が返されることがとても大事だと思っていて、大谷さんがお金をいっぱい持っているかどうかは関係なくて、私たちみんなに関わる話だと思うんです。水原被告が支払い能力がない場合、大谷さんは民事訴訟は起こさないと思うんですよ。私は賭博の胴元や賭博会社などに支払い能力があるんじゃないかと思っていて。大谷さんにお金が返ってくるための法的構成とかが可能性としてあるのかなっていうところが知りたいのですが、いかがですか?」
(村尾弁護士)「基本的に胴元のボウヤー氏とか違法賭博の胴元を訴えるっていうのはなかなか難しい。ハードルが高いと思います。彼らは知らんかったと。あくまで彼らは胴元として掛け金を受け取っただけだということで。大谷さんっていうのはもちろんわかってたと思うんですよ。大谷さんがバックにいるからこそ大金を動かせてたわけですから、わかってたけども、被害回復という意味ではなかなか難しい。やはり大谷さん以外の犯罪被害者の方に関しても、アメリカの法務省のページとかにもなかなか実態としては返ってこないのが実情であるということは書かれています」
もしも水原被告が自己破産したら?日本に強制送還された場合は?
ーーーもしも水原氏が自己破産したらチャラになるのか、これについては『支払い義務は残る』ということですね?
(村尾弁護士)「そうですね。やはり犯罪の収益金とか罰金については免責はされない、チャラにはならない」
ーーー服役後に日本へ強制送還なんて話もありましたが、その場合は『アメリカの判決を日本で執行することは理論上可能』ということですね?
(村尾弁護士)「ただ、理論上可能であって、アメリカの判決を日本で承認する手続きっていうのをしないといけないので、結構面倒くさいというか大変ですので、事実上はしないというかできないのかなとは思っています。難しいかなと思っています」
ーーーもし日本に強制送還となった場合は、アメリカ財務省はお金は諦めるということになるんですか?
(村尾弁護士)「アメリカの財務省が取るっていうのはかなりハードルが高い。こういう特別な手続きを経てやるっていうことはありえなくもないですけども、難しいかなと思っています」
ーーー大谷選手への約26億円の返済はどうなるのか、これについては裁判所から賠償命令が出されるということですね?
(村尾弁護士)「アメリカでは犯罪の被害者に対して、その被害金も返済命令ってのは罰金とか懲役刑、禁固刑とは別に出すこともできるので、今回おそらく大谷さんに対してお金を返しなさいっていう命令が出る可能性は高いとは思っています。ただ回収可能性という意味ではなかなか難しいというところです」
ーーー大谷選手が『もうお金はいいです』となった場合はどうなる?
(村尾弁護士)「基本的に裁判所の裁量で出るので、要するに判決は出たけども、大谷選手がリクエストせずに、判決が出ただけで解消されるっていう状態はあり得るわけです」
約30億円の利息だけで年間1.5億円に!
ーーー利息のことも気になるところです。この30億円を分割で払うときには利息がかかるんですね。追徴課税・罰金・大谷選手への支払いの合計約30億円に対して、年間1.5億円の利息となるのではないかという計算です。
(村尾弁護士)「ただ現実的にはそもそも元本も払えないと思うので、裁判所の裁量とか検察官が免除するっていうことも現実的にはあります」
ーーー利息には免除や上限をつけることもあるということなんですけれども、仮に大谷選手が支払わなくていいですよと言ったとしても、追徴課税と罰金の2つは残るわけですか?
(村尾弁護士)「そうですね。やはり国の税金と、あとは罰金というところなので、ここは免除はしないはずです」
今後の水原被告の裁判の見通しは?
ーーー今後の見通しは?
(村尾弁護士)「次回、罪状認否の変更ということで有罪を認めて、その後に裁判官がおそらく調査報告書を出しなさいということで、財務状況とか情状を書いた報告書を裁判所に提出して、それに基づいて量刑が決まる、という流れになると思います」
ーーーどれぐらいの量刑になるというふうに考えてらっしゃいますか?
(村尾弁護士)「司法取引の合意書を見ていると、双方は最低5年から6年は覚悟はしているということまでは言えますけれど、それが7年になるのか8年になるのかっていうのはなかなか…。情状はかなり悪いとは思っています」
アメリカのメディアによりますと次の出廷は7月4日。ここで有罪答弁が行われるのではということです。
(2024年5月15日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)