新型コロナウイルスの影響でバスツアーが大打撃を受けています。国土交通省によりますと、貸し切りバスの稼働率は去年2月は40%ほどでしたが、去年3月には10%ほどに下落。去年9月~11月にはGoToトラベルの影響で一時は盛り返しましたが、その後は再び下落している状況です。さらに事業の廃止や休止を届け出た貸し切りバス事業者は、去年3月~去年12月で160社、今年1月と2月だけで37社に上っています。こうした中、ツアー客を取り戻そうと、感染対策に徹底的にこだわった新たなバスツアーが始まりました。
バスツアー前に行われる「抗原検査」
4月2日金曜日の午前8時。JR難波駅の一角に次々と人が集まってきました。この日、開催されたのは、「奈良県吉野山へ桜を見に行く日帰りバスツアー」。吉野山は、200種類3万本の桜が密集し、その豪華さから「一目千本」とも称される桜の名所です。
とはいえ、新型コロナウイルスがまん延する中で、1日中知らない人と時間をともにするだけに不安もあります。そこでツアーの主催者は安心して参加してもらうため、徹底した感染対策の実施にこだわりました。
まずは、新型コロナウイルスの「抗原検査」です。ウイルスを保有している可能性を10分程度で調べられるといいます。この検査キットは観光客不足に悩む吉野町から提供されました。もちろん、検出された場合はツアーに参加できませんが、この日は検査の結果、ツアーの参加者15人全員が陰性でした。
参加者の方を向かずにアナウンス
ということで、バスはいよいよ吉野山へと出発です。
(ツアーを主催した吉野ビジターズビューロー・長谷政和さんの車内アナウンス)
「乗車前に検査をしていただきまして、見事に皆さま陰性ということで、ツアーにご参加いただけるようになりました」
本来、参加者の方を向いて行う添乗員のアナウンスは…
(ツアーを主催した吉野ビジターズビューロー・長谷政和さんの車内アナウンス)
「今回のツアーの説明させていただきます。飛沫防止ということがあるので、前を向いて喋らせてもらいます。失礼いたします」
飛沫を飛ばさないように参加者に背を向けてアナウンスを行います。
間隔を開けた座席 静かな車内
座席もソーシャルディスタンス。通常49人乗れるバスの定員も半分以下に制限。1列ずつ空けたうえで、同伴者以外とは横並びにならないようにしました。
そして、バスツアーといえば車内でおしゃべりしながら行くのが醍醐味ですが、車内は走行音が聞こえるだけでとても静かです。感染防止のため、なるべく会話を控えるように呼びかけています。
参加者の中には吉野町の隣・宇陀市からわざわざ難波発のツアーに参加した人も。
(参加者)
「私は奈良からなので、直接吉野に行った方が近いんですけれど。吉野の桜を見たいんですけれど、個人で行くと高齢でもあるので、連れて行ってもらえたら楽なので。主催者も気を付けてくださっているのはすごくありがたいです」
同じ方向を向いて食事
約2時間半後、吉野山に到着しました。訪れたのは後醍醐天皇ゆかりのお寺・如意輪寺。特別に貸し切られたお座敷では、目の前に綺麗なピンクの山が広がります。
(参加者)「すごく綺麗。上千本がきょう満開でね」
桜を眺めながらの贅沢なランチタイムですが、席の間にはアクリル板。さらに全員が同じ方向を向いて静かに食事します。
(参加者)
「おいしそうです。みなさんにも差し上げたいくらい」
密を避けて…散策エリアも工夫
今回のツアーでは散策エリアも観光客が多く集まる場所から少し離れたところに設定。ツアー以外の花見客との接触をできる限り減らしました。
そして参加者が最後に向かった先には、満開の桜が広がる吉野の絶景がありました。
(桜を見る参加者)
「ここからの景色が見たかったのよ。これが噂の。」
「ここは抜群ですね。山全体が桜ですから。ゆっくりと吉野の桜を見に来られてよかった」
感染対策を徹底して手間暇かけたバスツアー。参加者の満足げな様子に主催者も…
(ツアーを主催した吉野ビジターズビューロー 長谷政和さん)
「お客様に安心安全に吉野に来ていただくことが目的だったので、その意味ではうまくいったのかなと思っています。このコロナ禍で観光業はすごく厳しい状況にあるので、コロナ対策をしっかりしたうえで吉野に来て楽しんでいただこうという姿勢で、今後もいろんなツアーを企画していきたいと思っています」
(4月6日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『コダワリ』より)