新型コロナウイルスの重症患者が治療を受けている『レッドゾーン』。緊迫した医療現場の実態を取材しました。
コロナ重症患者の入院・治療にあたる宇治徳洲会病院
4月28日に取材をさせていただいたのは京都府宇治市の「宇治徳洲会病院」。新型コロナウイルス患者の病床を最大12床備えていて、特に重症患者の入院・治療にあたっています。まずは重症患者以外もいる1階で話を聞きました。
(三木健児医師)
「(モニターに映る)こちらの方は検査結果待ち。血液検査とか。重症ではなく、少なくとも中等症に該当するので、中等症を診てくれる病院への転院を京都府のコントロールセンターを経由して決めていってもらう。(Qこの方は何歳?)26歳です。(Q若い方が多い?)若年者の重症化が増えているなという印象です」
この病院では、中等症と診断された患者は他の病院へと移して、重症患者を中心に受け入れるシステムをとっています。
(三木健児医師)
「うちの病院の“真の姿”は4階にあるので、ぜひそちらを取材してもらった方が」
扉を隔てた向こうに「レッドゾーン」
そして取材班は重症病床がある4階へ案内されました。
(松岡俊三副院長)
「ここから先がコロナの患者さんが実際に入院しているレッドゾーンです。元々は救命救急センターの入院病棟として使われていた場所を、少し工事をしてコロナの患者さんを診られるようにしました。元々扉を二重にしていて、(間のスペースには)中に入るスタッフのための感染防御具がスタンバイしてあります。さらに扉を開けて、ドアを1枚隔てた先では、感染防御具を身に着けたスタッフが実際にコロナの患者さんのベッドサイドで処置などをしています」
重症患者がいるいわゆる『レッドゾーン』がガラス越しに見渡せます。
(松岡俊三副院長)
「(ドアの)上の部分は開いています。コロナに関しては空気感染というより飛沫感染ですので、空調を『陰圧』といって、一方向に流して処理をして外に排気するという仕組みをとっています」
記者も感染対策をして内部へ 医師らがECMO装着の患者に対応
今回、特別に記者のみでレッドゾーン内での取材が許可されました。ゾーンに入る前に、ガウン・手袋・帽子・フェイスガードなどを装着します。
(看護師)「では、入りますね。普通に息をしていただいて大丈夫です。大丈夫なので」
(記者)「入ります。…ここがレッドゾーン?」
(看護師)「レッドゾーンです。」
(看護師)「(この患者は)ECMO(エクモ)をつけている方で、16時間うつぶせなので、それを今から上向きにする」
(記者)「この方はエクモを装着している?」
(看護師)「そうです」
処置を受ける70歳の男性重症患者は、抜き出した血液に酸素を入れて再び体内に戻す人工肺「ECMO」による治療が必要だとして、2日前に運びこまれました。
(医師)「ECMOの機械はこれです」
(記者)「これがECMO?」
(医師)「こちらがECMOのポンプです」
(記者)「今は何をしている?」
(医師)「うちの病院では16時間うつぶせになり、次は8時間仰向けにする。コロナ肺炎は背中から肺にダメージが強いので、そのダメージをできるだけ軽減する目的で、長いことうつぶせになってもらう。今うつぶせの16時間が終わったので、次は8時間の仰向けに体位変換。それが一番人手がいる作業」
(医師)
「(ECMOの)脱血の管はこれくらいの色に。血液は酸素化されると赤くなります。こちらの管を見てもらうと違いがわかると思います。脱血と送血になるので。脱血から黒い血を引いてきて、酸素化をよくして赤い血に。酸素化をよくした血をまた静脈に戻している」
別の68歳の男性患者は、この病院の内科外来を受診した際に陽性が判明して、人工呼吸器を装着しました。口から気管まで管を入れて呼吸の補助をします。
(記者)「この人工呼吸器では難しい人がECMOを装着する?」
(医師)「そうです。人工呼吸器でも生命維持が困難になってきた場合においては、一時的に人工肺=ECMOを装着させていただいて、肺が改善してくればECMOを離脱して、また人工呼吸器のみになって、それでも大丈夫だったらようやく人工呼吸器も離脱できる」
人工呼吸器やECMOを装着している間は全身麻酔をかけています。こうした肺の機能を改善する装置とウイルスを抑制するとされる薬などを併用しながら治療にあたっているのです。
(記者)「ECMOをみられる看護師は何人いる?」
(看護師)「うちは50人くらいスタッフがいるんですが、当初は3~4人くらいしかいなかったです。今は新たに来てくださった方とかも合わせると、10人弱くらいはいるかなと思います」
(記者)「休みはとれている?」
(看護師)「週休はとれていますし、スタッフの希望もしっかり聞いて汲んでくださっているので、休みはとれています。ただどうしても残業とかが増えてしまっている」
日中は看護師4人・医師3人でチームを組んでいるといいます。
32歳で体重130kgという男性患者への対応では、体を回転させることが難しく、喉を切開して人工呼吸器の管を直接気管に挿入する手術を行うことにしました。コロナ患者のため、手術室には運ばず、レッドゾーンの中で1時間近くにわたって手術が行われました。
小児科医もコロナ対応 受け入れ医療機関に大きな負荷がかかる現状
コロナ病棟で働く医師の中には小児科医もいます。
(小児科 篠塚淳医師)
「僕らはコロナばかりを見ているわけではなくて、感染症の専門医が1人もいない中で、元の業務をやりくりしながらコロナのために時間をとってみんなでやっていかないとどうしようもないということで、いろんな科の先生をかき集めながらやっています。(Q今の課題は?)けっこう疲れてきました。疲れています。やる気だけではなんとも、しんどいなという心的な課題はあります」
コロナ治療のチームを率いる松岡副院長は次のように話します。
(松岡俊三副院長)
「病床ひっ迫、医療ひっ迫って、皆さん入院のことを思われていると思うんですが、実はそうではなくて、(当院の)発熱者の外来、陽性者の外来、この辺りも我々に負荷をかけているんです。それはいろんな医療施設に振り分け可能な業務なんです。それが適切に振り分けられていないのが僕らは非常にしんどいですね」
今、コロナ患者を受け入れるかどうかはそれぞれの病院の“心意気”に頼っているのが現状です。それだけに副院長は行政に不公平感の解消を求めます。
(松岡俊三副院長)
「困っている人がいたら助けるしかないと思うんですけれど。僕らもチームの力でやっていますが、あまり負荷がかかりすぎると、ポキっと折れそうになるときもありますので。粛々と続くようなシステムを行政の力で整えていただきたいなと思っています」