新型コロナウイルスによる巣ごもり需要でペットを飼う人が増えているといいます。その一方で「野良猫」の増加が問題になっています。保護活動を行う女性を取材するとその原因が見えてきました。

野良猫の捕獲活動 3時間で14匹

4月12日の午後10時ごろ、大阪府松原市の住宅街で地域のボランティアグループが野良猫の捕獲活動を行っていました。路上に置かれたケージにはエサが置いてあります。そして、わずか数分後、恐る恐る1匹の猫が中へと入っていきます。すると、ケージが閉まり、猫が捕獲されました。
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次々とケージに収まる猫たち。事前に下見した時は10匹ほどいたといいますが、約3時間で14匹もの野良猫が捕獲されました。猫たちは車に積み込まれていきます。一体、どこへ向かうのでしょうか。

野良猫に不妊手術をする女性「不幸な命が増える」

4月13日、捕獲された野良猫たちは神戸市灘区にある動物病院「ねことわたしスペイクリニックKOBE」にいました。

(ねことわたしのスペイクリニックKOBE 黒田友恵さん)
「よしよし、いい子ね。がんばろうね、きょうね」

そこで手術台に乗せられる猫。行われていたのは去勢や避妊などの不妊手術です。ここは「スペイクリニック」と呼ばれる、主に野良猫の不妊手術を行う専門病院です。この病院を運営しているのは黒田友恵さん(54)、4月12日の捕獲活動にも立ち合いました。

(黒田友恵さん)
「(Qきょうの手術件数は?)23件か22件くらいだと思います」

クリニックには次から次へとボランティアの人たちが野良猫を連れてきます。
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(黒田友恵さん)
「数が多ければ虐待される率も多いので、それだったらTNR(捕獲・不妊・戻す)をした方が早道じゃないかなと思って。スペイ(不妊手術)をどんどん進めない限り、不幸な命が増える」

実は今、新型コロナウイルスによる巣ごもりで新たにペットの飼育を始めた人が急増していて、一般社団法人ペットフード協会の調査によりますと、2020年の猫の飼育数は前年より16%も増加。その影響もあり野良猫が増えているのです。

(黒田友恵さん)
「捨て猫も増えるだろうし。飼い猫の問題も大きくて、“半外飼い”と言って昼間は外に出してあげようという子が、外で交尾をして増えるのもかなりあると思います」
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不妊手術の費用は一般病院では通常2万円~3万円(検査費など含む)ほどかかります。しかしスペイクリニックは不妊手術に特化することでメス8800円・オス4800円と費用をかなり抑えています。

その甲斐もあって、ボランティアらが野良猫を持ち込みやすく、1か月に300匹~400匹の手術を行っています。

野良猫たちは元の街へ

野良猫の捕獲から2日後の4月14日。健康状態を確認した上で猫たちは元の街に戻されます。ケージを開けると、猫たちは走り去っていきました。こうした活動を続けないと野良猫を減らすことはできないと黒田さんらは考えています。

(黒田友恵さん)
「元気でよかったなというのと、自分の命だけ全うすることができるんですね。だからしっかり最期まで生きていてほしいなと思いますね」

最初は2匹…把握できない猫と暮らす高齢男性

別の日、大阪市内のボランティアから連絡があり、黒田さんらはある高齢男性の自宅を訪れました。男性がシャッターを開けると…

(黒田さん)「えらい臭いするけどいける?」
(男性)「うん」
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家に入ると、そこにはケージが並んでいて、猫たちがいました。ニャーニャーと鳴き声が聞こえます。

(黒田さん)「どこどこ?ああここ?こっち子猫ですね」
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ここで生まれたとみられる子猫もいました。ケージの中にはエサが散乱しています。

(黒田友恵さん)
「(環境が)劣悪ですよね。糞尿もすごいですし、床もべたべたなんですよね」

飼い主はひとり暮らしの70代男性で、元々飼い始めた猫は2匹でした。しかし不妊手術をしなかったことから、いつの間にか把握できない数の猫と暮らすことになったといいます。

黒田さん、黒い子猫を抱き上げました。

(黒田友恵さん)
「生後1か月くらいですけどね、状態が良くなくて、目やにが付いていますね」
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家の中では放し飼いの猫もいて家中を駆けまわります。
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活動を始めて3時間あまり、全ての猫を捕獲したと思われましたが…。

(屋根裏のぞく黒田友恵さん)
「うそやん!また3匹おる!これ捕獲しなかったら絶対増えるやん」
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屋根裏に野良猫が入り込んでいました。1匹でも残すとまた増える可能性があるのです。結局この日に捕獲したのは15匹に上りました。

黒田さんらが猫の捕獲活動をする中、飼い主の男性はというと…なんと野良猫にエサを与えていました。

  (男性)「うちの猫と全然関係ない」
(黒田さん)「こういうふうにするから増えるねん」 
  (男性)「文句いわはるけど 痩せてガリガリになっているから」 
(黒田さん)「痩せてガリガリはちょっと気になるよね」
  (男性)「うちの猫とちゃいます」
(黒田さん)「手術した子に基本的にあげるからね。手術していこうね」
  (男性)「あ、そうなの?」
(黒田さん)「そうなの!」

多頭飼育崩壊は“社会のひずみ”

今、こうした多頭飼育が崩壊した現場での依頼が週に1度はあるといいますが、飼い主は地域から孤立した高齢者が多く、コロナ禍で今後さらに増えると危惧されています。

(黒田友恵さん)
「これ自体が社会のひずみだと思っているんですね。(誰かが飼い主と)もっともっとコミュニケーションがとれていたら、心がつながる人がいたら、こうはならなかったと思っているんですね。猫はおじいちゃんの話し相手やったんやねと」
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一部の自治体では野良猫の引き取り手を募集する取り組みを行っています。しかし、人に慣れていない猫などは殺処分の対象になることから、これ以上の野良猫を増やさないために飼い主には自覚を持ってほしいと訴えています。

(5月6日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『コダワリ』より)