いま、ネット上で売買される偽物のブランド品が増えているのですが、その背景には新型コロナウイルスの感染拡大があるといいます。どういうことなのでしょうか。

かつては日本最大級“偽ブランド品”が販売されていた商店街

大阪の鶴橋商店街。韓国料理店や衣料品店など多くの店が所狭しと並ぶこの一角も、新型コロナウイルスの影響で人通りはまばらです。そんな商店街ではこれまで、高級ブランドの偽物が正規品の10分の1以下の値段で販売され、その規模は日本最大級とも言われていました。警察が摘発に入ってもまた新たな店ができるなど、いたちごっこが続いていました。

こうした偽ブランド品販売店が今はどうなっているのか、周辺の店主らに話しを聞くと…

(韓国料理店の店員)
「今はもう無し。全然。話聞いたことないし、買いに来るお客さんもおらん」

(乾物店の店主)
「取り締まりやって捕まって、また偽ブランド品を売ってまた捕まってということで、やっぱり人生どんどん下向いていかなきゃならないということに気づいた人から止めている」

では、偽ブランド品自体も減っているのでしょうか。

“偽ブランド”輸入差し止めは前年比4割増

関西空港にある大阪税関・大阪外郵出張所。国際郵便で届く大量の荷物に危険なものがないか、違法に輸入されたものがないかを日々チェックしています。2021年は東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されていることから、テロ対策として検査体制も大幅に強化しているといいます。
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その一角に設けられているのが「知的財産検査場」。偽ブランド品が紛れ込んでいないか専門の検査官が荷物1つ1つを開封してチェックしています。
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例えばスニーカー。精巧に作られていて、一見、正規品のように見えますが…
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(大阪税関・知的財産調査官 杉下純上席調査官)
「恐らく偽物だと思われます。特徴的な匂いもあります。おそらく接着剤の匂いなのかなと思うんですけどね。そういうのも1つの(判断)材料にします」

ほかにも、財布にスマートフォンケースなどあらゆる品物が並びますが、全て偽物です。

さらに人気アニメ「鬼滅の刃」のグッズも…。

(検査官)「(Qどこから来た?)中国ですね」
(検査官)「『鬼滅の刃』のグッズは最近ちょっと落ち着いています。もう『呪術廻戦』とかにかなりシフトしています」
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その言葉通り、最近流行り始めたアニメ「呪術廻戦」のクリアファイルやノートなども出てきました。このあと、税関が権利者に確認したところ、許可なく作られたものだとわかりました。
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押収される偽ブランド品は平均して1か月で2トントラック1台分に上ります。当然、国内で流通させることはできないため、全て産業廃棄物として焼却処分されます。

大阪税関の統計では「偽ブランド」として輸入を差し止めた荷物の数は2020年で約6300件と前の年と比べて4割増え、このうち85%が中国から届いたものだったということです。大阪税関は新型コロナウイルスの影響で「インターネット通販」を利用する割合が増えたことが背景にあるとみています。
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実際、検査官が開ける荷物の多くが個人宅に届けられる小包でした。

(大阪税関・知的財産調査官 杉下純上席調査官)
「昔は業者から業者間というのが多かったと思います。それで大口というのがあったと思うんですけれども、(今は)個人で手軽に頼むことができるようになったというのが背景にあるのではと思います」

“極端に安いブランドのカバン”を注文してみた

ネット上にどれだけ偽ブランド品が横行しているのか、大手の通販サイトで検索してみると、海外ブランドの商品としては1万800円と極端に値段の安い“ブランドのカバン”を発見。販売しているのは中国・四川省の業者のようです。記者が注文すると2日後に商品が届きました。
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(記者リポート)
「商品が入る封筒の中を開けると、ブランドのロゴが書かれた袋が入っていまして、袋を開けるとカバンが出てきました。“おなじみの柄”も描かれています」

このカバンをブランド品の買取店「ゴールドプラザ梅田本店」に持ち込み、プロの鑑定士に鑑定を依頼しました。すると…。
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(ゴールドプラザ梅田本店・鑑定士 田宮新作さん)
「あくまで弊社の基準にはなるかと思いますけれども、偽物の可能性が高いかなと思います。例えば代表的なブランドのロゴの字体の違いとか、縫い目・縫い方の粗さとか、そこがポイントになるかと思います」

コロナ感染状況と関連する偽ブランドの流通

専門家は偽ブランド品の流通量は中国での新型コロナウイルスの感染状況と関連しているといいます。

(ユニオン・デ・ファブリカン 堤隆幸事務局長)
「しばらく1、2か月はおとなしかったというか、あんまり出品してこなくなったなあと思っていたんですけれども、中国のロックダウンが解除される前後くらいの時期から、またぐわっと数が増えてきて。海外の方から出品して海外から売りつける。警察の力が及ばない安全圏から売れるというメリットがある」

さらに偽物を買わされるだけでなく、別の犯罪に巻き込まれる可能性があると指摘します。

(ユニオン・デ・ファブリカン 堤隆幸事務局長)
「このごろはデータだけ盗んで、データで気が付かれないように悪さをする。偽造品を売っている(だけの)人の方がかわいい時代になってきた」

「個人情報」までも悪用されるケースも

例えばフリマサイトに出品されていた高級ブランドのバッグ。新品にもかかわらず、値段が安すぎることなどから試しに購入してみましたが、2週間近く経ったいまも商品は届いていません。

出品者は「女性とみられる名前で大阪府内に住んでいる」と書かれていますが、連絡先とされた番号に記者が電話をかけると、「岡山県在住だという男性」が出ました。
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(男性)
「電話番号だけ自分のが勝手に使われているか、自分も出品したことはなくて落札・購入したことはあるんですよ。自分もなかなか届かないことがあって、出品相手の電話番号に電話したことがあるんですよ。そしたら全然違う人が出ました」

男性は以前、フリマサイトでトラブルに巻き込まれ、その際に知られた電話番号を悪用されたのではと話します。

(男性)
「(自分が商品を)購入した時に相手も連絡先が見えるようになるじゃないですか。何かトラブルがあったとき(の連絡先)なのに、勝手に使われるようなのは困りますよね」

ネットで横行する偽ブランド品の販売。悪質な業者は個人情報まで狙っています。

(5月25日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『コダワリ』より)