緊急事態宣言が解除されてから1週間で『夜の街』はどう変わったのか。苦境が続いていた飲食店に客は戻ってきているのか。全国でどこにも「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」が出ていないのは今年4月以来で実に半年ぶり。大阪のキタ・ミナミの街を取材すると、酒をやっと提供できると歓喜する店もあれば、時短要請の継続で複雑な思いを抱える店など、様々な思いが溢れていました。
宣言解除初日の夜 金曜日
10月1日、緊急事態宣言解除後で初めての夜。
酒類の提供が解禁された大阪・ミナミの居酒屋には、かつての常連客が戻ってきていました。待ち焦がれた一杯はやはり格別のようです。
(店員)「生ビールです」
(常連客)「はい、ありがとう。久しぶりですわ、もううまいね。おいしい」
(常連客)
「本来はこれが当たり前やねんけど、ずっとそういうの忘れていたから、やっぱりいいですよね。やっぱり家で飲む味とは違うからね」
中には感極まる人もいました。
(常連客)
「こんなことがあってんな…って10年後に笑えるようなことになったらいいなと思っています。本当に大将は一生懸命していますから、応援したいというか。大阪の飲食店みんな、もっとこれから花咲くと思います」
苦境に立たされ続けてきた店の大将に話を聞くと、10月の売り上げは前月の2倍~3倍を見込んでいると言います。
(けー坊 岡田啓二店長)
「正直に言ってめちゃめちゃ不安やったんですよ。来るのかなと思ってね。常連客が順番に来てくれてね、今はもうめちゃめちゃうれしいです。もう限界やとか苦しいとか言ってばかりでしたからね。今まで僕らはやめないで頑張ってきたので、また黒字の世界に戻したいと思って。この2年間は大赤字やったので」
しかし、緊急事態宣言解除の一方で、大阪では午後9時までの時短要請が続いていて、コロナ前のように、とはいきません。
(けー坊 岡田啓二店長)
「本音はやっぱり午前0時までという営業形態なので、午後8時や午後9時から来る常連さんが5割くらいいるんですよ。その常連さんが今は来てくれないので。やっぱりほんまはフルで売り上げをあげようと思ったら時間延長しかないので」
この店は時短要請を守りながら営業をしていくということです。
緊急事態宣言解除後で初めての夜、街には様々な思いが溢れていました。ミナミで街行く人に話を聞きました。
「きょうは一番ええ日。こんなん今までなかった」
「まだ開いている店あるから一緒に飲みに行く?」
「また普通の生活に戻りたいですね」
「もっと制限がなくなって自由に飲めたら。一度マシになって、もう一度緊急事態宣言来ると思うけどな」
(Q緊急事態宣言明けて街の声を聞いているのですが?)
「それよりも眞子さまの結婚が悲しくて。ずっと悲しくて泣いている」
宣言解除から3日目の夜 日曜日
10月3日、緊急事態宣言解除から3日目。この日は日曜日とあって大阪・キタの歓楽街は午後10時を過ぎても喧騒に包まれていました。ここでも街行く人に話を聞きました。
(Qお酒を楽しく飲まれたんですか?)
「はい!楽しかったです!」
(Q何軒くらい行かれたんですか?)
「2軒くらいです」
(Q開いているお店を探すのは大変じゃなかったですか?)
「大変です」
「全然、余裕で開いてまーす」
商店街を歩くと、多くの店が午後9時以降も営業していて、時短要請に応じないという選択をしていました。
中には『ゴールドステッカー』を貼りながら営業を続ける店もありました。午後9時までの時短要請や感染症対策を遵守する店として大阪府がお墨付きを与えていますが、もう何でもありなのでしょうか。大阪府の吉村洋文知事は次のように話します。
(大阪府 吉村洋文知事)
「そういう店があったら大阪府にも連絡をお願いしたいと思います。認識としても、飲食店は3万6000店舗もある訳ですから、当然ゼロにはならないと思いますけど。そういったところは(見回りなどを)繰り返しやりながら対応せざるを得ないと思うので」
宣言解除から1週間の夜 金曜日
10月8日、緊急事態宣言解除から1週間が経った金曜日。大阪・キタ周辺を改めて取材しました。
(記者リポート)
「歩道には人の波ができています。こちら側に向かって来る人は、おそらくこれから飲みに行く人だと思われます」
Agoopのデータによると、この10月8日の大阪・梅田駅付近の夜間の人出は、緊急事態宣言中の平日(平均)と比べて、52%増加していました。
そして『ゴールドステッカー』を貼りながら午後9時以降も営業を続けていた店を再び訪れてみると、感染症対策を緩めるということなのか、10月3日時点ではゴールドステッカーが貼られていましたが、10月8日にはブルーのステッカーに変わっていました。
(記者リポート)
「先週来た際は午後9時を過ぎても営業していましたが、ゴールドステッカーが貼られていました。きょう見てみますと、ゴールドステッカーが剥がされていますね。これはもう時短要請には応じないよという意思表示なのでしょうか」
判断分かれる飲食店の対応
これまで時短要請に応じてきたものの、今回は営業を続けるという選択をした店も少なくありません。経営状況などから苦渋の選択で店を開けざるを得ないと話す店主もいます。
(今回は時短要請に応じないというすし店の店主)
「(Qさすがにもう我慢の限界?)そうですね、開けているところはそうじゃないですか。せっかく人が集まるんですから梅田に。(Qまた人が増えてくると冬に感染が広がるのではないかという懸念は?)先のことはずっとわからない状態なので、今までが。こうせいああせいと言われても」
一方で午後9時すぎ、要請に従って店を閉めたミナミの居酒屋は次のように話します。
(今後も時短要請に従うという居酒屋の店主)
「(Qまだ営業している店もありますがどう思いますか?)そうですね、もう正直、よそのことはあんまり考えないでおこうというのがありますね。自分はルールに従ってというか」
自粛も2年近くになろうとする中で飲食店もそれぞれ状況は違います。ただ「正直者が馬鹿を見る」といったことがないような仕組みづくりも必要なのではないでしょうか。