好きなアイドルやキャラクターなどのことを「推し」と言います。コロナ禍で「推し」を応援する「推し活」が熱気を帯びています。アイドルのライブや握手会など対面でのイベントがない中で、多様な「推し活」が女性たちの心を満たしているようです。その現場を取材しました。
数年前からブームになっている『推し活』
京都市内に住む大学4年生のカナさん。カナさんの部屋には、アイドルグループのポスターや全身をかたどったアクリルスタンドなどが置かれていて、まさに好きなアイドルに囲まれるような空間になっています。
(大学4年生 カナさん 1月16日)
「(去年)デビューした『BE:FIRST』というボーイズグループのポスターなんですけども。オーディション番組きっかけで、応援しているといった経緯です」
カナさんが夢中になっているのは、去年11月にオーディション番組を経てデビューしたボーイズグループ「BE:FIRST」です。カナさんの「推し」は、天性の歌声の持ち主のJUNONと、ダンスの世界大会で世界一になったSOTAの2人。
(大学4年生 カナさん 1月16日)
「(メンバーの1人である)JUNONさんは、ダンスも歌も未経験でオーディションを受けたんですけども、その未経験さを感じさせないほどの歌声と、ダンスのパフォーマンスがすごく心に刺さって魅力だと思いました。全員大好きなんですけども、JUNONさんとSOTAさんの2人が特に『推し』です」
「推し」とは、好きなアイドルやキャラクターなどのこと。「推し」への感情が高まると『推しが尊い』や、「推し」しか目に入らないことを『推ししか勝たん』など、さまざまなフレーズが生まれ、数年前から「推し活」がブームになっています。
カナさんの部屋にはCDもズラリと並んでいました。同じCDが12枚もあるようですが、なぜなのでしょうか。
(大学4年生 カナさん 1月16日)
「CDを購入すると付いてくるキーホルダーであったり、アクリルスタンドみたいな特典であったり、オンラインでのトークイベントが抽選で当たる、そういうものに応募したいっていうのがひとつと。自分の可能な限りたくさん買って、売り上げに貢献したい」
「推しのアクリルスタンド」と記念撮影 コロナ禍の『推し活』とは
ライブや握手会といった対面でのイベントが減る中、コロナ禍の「推し活」とはどのようなものなのでしょうか。
1月16日、カナさんはSNSで知り合った「推し活フレンド」と大阪市北区にあるカフェ「cafeイロモノ」にいました。
カラフルなドリンクを注文したカナさんは、自宅から連れてきた「推し」の全身をかたどったアクリルスタンドをバックから取り出してドリンクの横に並べると、写真撮影を始めました。
(カナさん)「“ブツ”を…。誰推し?」
(友人)「RYOKIとRYUHEIです」
(カナさん)「あっ、両方いる。たまたま出たのがRYOKIとRYUHEI、JUNONで…」
(友人)「あっ、こっちバックにする?」
(カナさん)「なるほど。めちゃかわいい」
(記者)「インスタグラムに載せる?」
(カナさん)「載せます」
(友人)「記録って感じです」
(カナさん)「思い出」
写真を撮影した後もテーブルの上には「推し」のアクリルスタンドが置かれていました。
(カナさん)「疑似デート」
(友人)「3人いるけど」
(カナさん)「視線を感じる…」
(友人)「まあまあ生意気な顔して見られている」
「推し」とは直接会えなくても、心は満たされているようです。
『推し活』の熱を取り込もうとする企業
コロナ禍でも熱い「推し活」。企業もこの熱を取り込もうとしています。
大阪市阿倍野区にある「あべのハルカス近鉄本店」で1月18日に始まった「バレンタインフェア」。今年はさまざまな色のチョコレートが並んでいます。
(近鉄百貨店・バイヤー 大下健太郎さん 1月11日)
「今年は『推し』という言葉をキーワードとして展開させてもらっております。弊社の女性社員の声から出た企画になっているんですけれども。アイドルの方のカラーというものがそれぞれあるみたいでして。『自分の好きなアイドルのカラーを集めたい』というコレクター的な購買意欲があると聞きましたので、ちょっと面白いんじゃないかと」
一方、去年12月30日、大阪市北区にある「タワーレコード梅田NU茶屋町店」では、「推し活グッズコーナー」が設けられていて、その中で色んなカラーが取り揃った「推し活お守り」が販売されていました。
(タワーレコード梅田NU茶屋町店 中村安希さん 去年12月30日)
「こちらが『推し活グッズコーナー』でございます。『推し活お守り』というのがありまして、ライブの席運とかを祈ったりするのに、お守りを使っていただいたり」
ライブで良い席が抑えられるなどのご利益があるかもしれないそうで、実際に神社で祈祷されたものだといいます。ほかにも「うちわ」や「チェキの保存袋」など、さまざまなグッズが売られています。
「グラス」や「お面」を自作…多種多様な『推し活』の楽しみ方
この店をよく利用する「BE:FIRST」推しのイオリさん(18)も「推し活」に夢中な1人です。
(イオリさん 去年12月30日)
「『めっちゃ頑張っているから私も頑張ろう』って思える存在です。(Qとくに推しているのは?)私(SNSの)アカウントでも『箱推し(=グループ全員推し)』って書いているんですけど、SOTA君です!私がないところを全て持っている人で、だからすごく憧れを感じていて推してます。でも箱推しです」
CDの陳列棚に置かれたポップの写真を撮り始めたイオリさん。
(イオリさん 去年12月30日)
「マジでありがとうございます。(ポップを)読んだら(店員もファンだと)ほんまにわかる。保存して家に帰って見たりとか、たまにインスタの推し活アカウントにあげたりとかしていますね」
まさに「推し活」中のイオリさんに持ち物を見せてもらいました。
(イオリさん 去年12月30日)
「これは自分で作った『推しグラス』というので。流行っているらしいんですけど作ったことがなくて、初めて推しができたので。SOTA君のアクリルスタンドは自引き、自分がCDを買って、それに付いてくるんですけど、(7人の中から)自分で引いたんですよ。やばくないですか?推しを引いたんですよ。これをケーキの上に載せて。めっちゃ楽しいです、めっちゃテンション上がります」
「BE:FIRST」のデビューを祝したケーキを手作り、推しを載せた写真で思い出に浸るといいます。
去年12月21日、「推し」のライブには行けない中、グッズを買ったり、手作りをしたり、そして、少人数でカラオケ店に集まり「推し」を楽しむ人もいました。歌いながら持っているのは「推し」の顔が印刷された自作のお面です。
(『BE:FIRST』のファン 去年12月21日)
「生きる力、癒しですね。ほんまに生きがい、一言で言うなら生きがいです」
コロナ禍で広がる「推し活」狂騒曲。溜まったうっ憤をぶつける活力にもなっているようです。