「フードバンク」という活動はご存じでしょうか。企業や個人が賞味期限が近い食品などをフードバンクに提供し、集まった食品を子ども食堂などの団体や食料支援を求める個人に無料で届ける活動のことです。近年、このフードバンクへの相談が急増しているといいます。理由は新型コロナウイルスです。感染拡大で職を失ったり収入が減ったりするなかで、日々の食事にも困る人たちが増えているのです。ただ、支援できる食品の数量にも限りがあり、フードバンクの力だけでは乗り切ることがなかなか難しい状況になってきています。食料支援の需要が増す中、フードバンクの在り方がいま問われています。

地域の人々を支える「子ども食堂」 活動を『フードバンク』などの団体や個人が支援

 大阪府堺市にある子ども食堂「マリリンの家」では週に1度、ひとり親家庭を対象として食事をふるまっています。新型コロナウイルスが流行してからも地域の人々を支えるため、一度も休んだことはありません。
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 子どもたちは料理を口いっぱいにほおばり、幸せそうな顔を見せています。

 (子どもたち)
 「(Q味はどうですか?)うまい」
 「(Q何がおいしい?)ハンバーグ」
 「全部(おいしい)」

 (2児の母親)
 「普段フルタイムで働いていると、こういった手の込んだ食事や品数を多く作るのが大変なんですけど、子どもの好きなメニューで作ってもらって、すごくおいしそうに食べていたのですごくうれしい。ありがたいです」
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 活動を支えているのは、フードバンクなどのさまざまな団体や個人から支援された食品です。
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 (マリリンの家 森重子さん)
 「いろんなところからご支援していただかないと、この活動はできません。おいしいものを、新鮮なものを喜んでくれる。すぐ表情に表れますやん。がんばっていたら応援してくれる人も多くなってくるしね。ありがたいなと思います」

『みんなで助け合って笑顔になることが活動の力になる』

 この子ども食堂に食品を提供している団体の1つが、同じ堺市にある「ふーどばんくOSAKA」です。年間約570万トンといわれる食品ロスを少しでも解消しようと活動しています。
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 (ふーどばんくOSAKA 事務局長・森本範人さん)
 「(企業などから)支援したいという問い合わせがすごく多いです。フードバンクと連携して何か取り組みできないかと、純粋な社会貢献でお話をいただく」

 支援物資には企業から賞味期限が近いといった理由で提供される食品のほか、行政からの災害備蓄品なども集まります。
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 森本さんはこの日、近くのスーパー「イオンフードスタイル栂・美木多店」にやってきました。

   (店員)「お菓子が結構多め。麦茶が賞味期限が近いです」
 (森本さん)「ありがとうございます」
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 このスーパーは、買い物客から家で消費されずに残っている食品を寄付してもらい、フードバンクに提供する活動を行っています。森本さんはこうして集まった食品を月に1度、受け取りに来ているのです。今回はインスタント食品のほかに、子どもたちが大好きなお菓子もありました。

 (ふーどばんくOSAKA 事務局長・森本範人さん)
 「51点あります。多かったと思います。もったいないからとかがベースにありますけど、基本的にはみんなで助け合う、笑顔になるというのが自分らの活動の力になっているのかなと思いますね」
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こうして集めた食品を子ども食堂や高齢者施設など、必要とするところに9年前から届けてきました。

「コロナで経済的に苦しく…」 個人からの支援のお願いが急増…去年は前年の倍となる500件

 ところがいま、施設だけではなく「個人」から支援を求める声が急増しています。

 【個人からの支援のお願い】
 「コロナで経済的に苦しくて、生活費がなくて、是非食料を送ってください」
 「食料品のたくわえもなくなりました。現在は、水だけです」
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 このフードバンクに届いた個人からの支援のお願いは、コロナ前の2019年は年間12件でした。しかし、新型コロナウイルスが流行するにつれ、仕事がなくなったり収入が減ったりする人が増加。2020年は約250件、2021年はその倍の約500件へと増えました。さらに今年に入ってからは、府内の感染者数が激増したこともあり、1月と2月の2か月間だけで140件以上の相談がありました。
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 2月下旬、「生活に困っている」という2人の子どもを育てるシングルマザーから食料支援の依頼がありました。森本さんは早速、準備をします。

 (ふーどばんくOSAKA 事務局長・森本範人さん)
 「お子さんがいてはるということなので、ある程度喜んでもらえるような食材をつめていければなと思っています。たとえばフルーツの缶詰だったりお菓子だったりとか」
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 ほかにカレーやラーメンなど、段ボールいっぱいに食品がつめ込まれます。さらに、お米10kgも用意しました。家族3人が2~3週間暮らせる量です。
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 森本さんは自家用車を運転して届けます。
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 支援を求めたこの女性はおととしに夫を亡くしたことで生活が一変しました。パートで働き、貯金を切り詰めて生活してきましたが、子どもは受験生で学費などの出費がかさみ、フードバンクの支援を頼らざるを得なかったと言います。

 (食料支援を受けたシングルマザー)
 「子どもが食べ盛りですので、お腹いっぱい食べさせていただけるというのはすごくありがたいです。(Q仕事にコロナの影響は?)ありますね、大阪で休業があったりで。今年も去年も、年収としてはけっこう下がってしまった」

個人への支援は1回まで…行政の相談窓口などを紹介して自立を後押し

 別の日も、食料支援を求める電話がかかってきました。

 【電話のやりとり】
    (森本さん)「米は5kg支援させてもらうので」
 (支援を求めた人)「助かります」
    (森本さん)「(支援は)1回だけなんです」
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 コロナ禍もあり食料支援を求める声が多く、個人に対する支援は1回までと決めています。それは、フードバンクに頼らずに自立してほしいという思いがあるからでした。そのため、森本さんは必ず行政の相談窓口などを紹介するようにしています。
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 (ふーどばんくOSAKA 事務局長・森本範人さん)
 「やっぱり相談や継続的な支援というのは、行政や専門的な団体さんと連携して、我々は後ろでしっかりと食支援という供給を担っていければなと思っています。仲間を増やしていくことで、それぞれ食支援について考えていけるような場所が必要なのかなと思っています」

 長引くコロナの影響でフードバンクの需要はさらに高まっています。