進化するお仕事体験。兵庫県西宮市にある「キッザニア甲子園」は、子どもたちが約100種類の職業やサービスを楽しみながら体験できる施設です。その大半を実在する企業が提供していて本物らしさが人気です。そこに12月22日に新たなパビリオンがオープンしました。住宅設備機器のメーカーによる「キッチンリフォームセンター」です。そのオープンまでの舞台裏に密着しました。
企業側がキッザニアスタッフに研修
大阪・梅田にある「タカラスタンダード 大阪HDCショールーム」。休館日に行われていたのは「ショールームアドバイザー」の研修です。
(研修で説明するタカラスタンダードのショールームアドバイザー)
「I型の特徴なんですけれども、作業効率がいいってことです」
「以前は開き扉が主流だったんですけど、今はこういう引き出しタイプの収納」
商品説明やお客さまの要望の聞き出し方などを学んでいるのはタカラスタンダードの社員…ではなく、キッザニアの社員とスタッフです。熱心にメモを取っているのは三木久代さん。新規パビリオンの企画開発責任者です。
(キッザニア甲子園 三木久代さん)
「キッザニアのスタッフとしては、タカラスタンダード社員の皆さまと同じくらいのレベルの知識は持っておかないと、どんなことを子どもに聞かれるかわからないので」
三木さんはこれまで任天堂やロート製薬などの人気パビリオンを手掛けました。出展にあたっては、スポンサー企業の知識を深めた上で、子ども向けにどう改良するか知恵を絞ります。三木さん、アイデアは浮かびましたか?
(キッザニア甲子園 三木久代さん)
「今日、お話を聞かせていただいて、かなりイメージができたので。お子さまだから簡単にするというわけではなくて、しっかり本物を入れて、そこで楽しいものにできたらいいなと思っています」
一方のタカラスタンダード側。キッザニアの出展が決まったのはあるお父さん社員の思いつきでした。
(タカラスタンダード 植村真さん)
「うちの娘がよくキッザニアに通っていまして。小さいころから仕事の楽しさを体験できる施設というのはいいなと思っていましたので。そこに出展する方法はないのかなと。タカラスタンダードは今年で110周年を迎えまして、企画したところ社内採用されました」
多くは『3分の2サイズ』だけど今回あえての通常サイズに
トントン拍子で出展が決まり、パビリオンの工事が進められていきました。今年11月26日、営業終了後のキッザニアに運びこまれたのは2台のシステムキッチン。キッザニアでは、子どものサイズに合わせて多くのものが『3分の2のサイズ』で再現されますが、今回は実際の使い勝手を体感してもらいたいと、通常サイズのキッチンが設置されました。
(タカラスタンダード 植村真さん)
「無事に収まって一安心。実感がわいてきましたね」
子どもたちがここで体験するのは、お客さまの要望を聞いてリフォームプランを考える『キッチンプランナー』の仕事です。企業からは、キッチンの種類や特徴をしっかり伝えたいとのリクエストがありますが、キッザニア側は子どもを飽きさせないように数を絞り込みたい。その調整が大変です。
(キッザニア甲子園 三木久代さん)
「子どもたちの集中力が続く時間、これを目安として30分ほどと我々はしていますので。そこにどう当てはめていけるか。落とし込むという作業、これが一番やっぱり時間がかかっています」
説明もしながら体験も楽しめる30分間になるのか。いよいよ、その日が近づいてきました。
『こども議員』たちがテスト体験
12月11日、この日はオープン前の最大の関門。キッザニアに提案したり商品開発をしたりする選ばれた『こども議員』たちを招いたテスト体験です。キッザニアでは新パビリオンのオープン前に必ずこのこども議員による検証が行われます。その反応次第ではオープン直前でも内容を修正しなければいけません。子どもたちの目は、案外、厳しいですからね。
果たしてどんな体験になるのでしょうか。
(こども議員たちに説明するスタッフ)
「コンロやシンク、水栓にレンジフード、食器やお鍋、調理器具を入れるキャビネットなどがあります」
スタッフがキッチンの形の違いや役割などを説明。そして場所を移動して、次も説明です。
(こども議員たちに説明するスタッフ)
「こちらは掴みやすいハンドルです。しっかりと握りやすく、少しの力で引き出しやすいですよね」
蛇口やコンロ、キッチンパネルなど、10項目にわたって役割などを説明しますが…あれ?もう18分が過ぎています。
その後、ようやくこども議員たちはキッチンに触れることができました。しかし、その時間は1分ほどで終了。
(こども議員たちに説明するスタッフ)
「それでは終了です。一度、席に座って、タブレットを使って、お客さまにご提案するプランを一緒に考えましょう」
目標の30分まで残り10分。こども議員たちは、悩みや要望が書かれたヒアリングシートを見ながら、アプリでキッチンプランを作ります。
最後にこども議員たちがそれぞれのプランを発表して35分で終了しました。
(キッザニア甲子園 三木久代さん)
「時間的にどうですか?長いなと思いました?普通ぐらいだなと思いました?短いなと思いました?」
(こども議員)「説明のときに一方的に聞くだけだから、ちょっと…」
(三木さん)「長いかなって感じ?」
(こども議員)「(うなずく)」
(こども議員)「ここを触る時間が短いと思った」
(三木さん)「もうちょっとほしい?」
(こども議員)「もうちょっとほしい」
三木さん、こども議員の視察はいかがでしたか?
(キッザニア甲子園 三木久代さん)
「コメントが、やっぱりそう思うんだなという部分があったりとか。聞くことが長ければ、その分、立っている時間も長かったりというので、受け身になってしまっている。子どもたちを巻き込んで楽しませるという要素をどれだけ入れられるか。(Qちょっと練り直しですか?)そうですね、ちょっと…になるかどうかというのはスタッフと相談しながら」
オープンまであと11日、さあここからどう変わるのでしょうか?
キッザニアに「キッチンリフォームセンター」がオープン
そして12月22日、「キッチンリフォームセンター」がオープン。こども議員の時と同じようにキッチンの説明からスタートです。
(スタッフ)「キッチンを使う時の動きやすさは、料理をする時の動きで考えます。料理をする時、皆さん、まずは何をしますか?」
(子ども)「冷蔵庫を開ける」
(スタッフ)「そうですね。食材を取り出しますよね」
要所要所でスタッフが子どもたちに質問して会話をするように変更。素材に触れてもらうポイントも増やしました。そしてキッチンプランの作成へ。
小学5年生の女の子が担当するのは『40代夫婦と子ども8人の大家族』。
タブレットの画面で、キッチンの上のキャビネットは「あり」を選択すると、画面の中のシンクの上にキャビネットがつきました。そうして完成したキッチンをみんなの前で発表します。
(小学5年生)「大家族なので、食器を洗うのが大変だなと思ったので、食洗器をつけました」
(スタッフ)「素晴らしい。ありがとうございます」
(中学2年生)「とにかくかっこいいキッチンにしたいと言っていたので、スタイルをシックモダンにして、全体的に黒を基調にしました」
子どもたちはそれぞれの要望に応えてキッチンを作っていました。体験を終えた子どもたちにも話を聞きました。
(小学5年生)「普段使っているキッチンにいろんな種類があることを初めて知って、びっくりしたし、おもしろかったです」
(中学2年生)「キッチンって身近にあるけど知る機会があまりないので、いい経験になったなと思います」
「今が完成ではなく進化し続けていく」
オープン日の子どもたちの様子をこの2人はどんな思いで見ていたのでしょうか?
(タカラスタンダード 植村真さん)
「本当に大変だったんですけど、子どもたちの真剣なまなざしを見たら、本当にやって良かったなと本当に心の底から思いました」
(キッザニア甲子園 三木久代さん)
「今が完成ではなく、これからずっと進化し続けていくものになっていくと思うので。より楽しんでいただける内容にできればいいかなと思っています」