オールブラックスとの死闘の上、南アフリカの劇的な優勝で幕を閉じたラグビーのワールドカップ。ラグビーの持つ逞しさ、華麗さ、団結心、友情、そして勝負の非情さと様々な思いを私たちに残してくれました。そんなラグビーの中で、年末年始に胸を熱くしてくれる大会といえば東大阪市の花園ラグビー場で行われる全国高校ラグビー大会。今年も憧れの“HANAZONO”を目指して各地で熱戦が展開されています。先週末には青森、新潟、佐賀、秋田で決勝戦が行われて各地区の代表が決定しました。

【青森県】

10月28日(土)、新青森県総合運動公園球技場で行われた青森県大会決勝では、5連覇を狙う青森山田と、強豪復活へ21回目の出場を目指す青森北が対戦。試合開始から県内公式戦56連勝中の青森山田がペースを握ります。開始わずか1分、SO藤春大悟選手のディフェンスライン背後へのキックにうまく反応したFB大西瑠海選手のトライで先制すると、8分にはNO8アホ・アントニオ選手が強烈な突破を見せます。40メートル以上を一人で走り切ってトライ。13分にもウイング大方維織選手の快走で1トライを加えて21対0とリードを奪います。

青森北も25分、「燃えろ!青森北」の横断幕を掲げた大応援団を背に反撃に転じます。モールを押し込んだ後、センターの田村飛永夢選手がディフェンスのギャップをうまくついてトライ、5点を返します。

しかし、青森山田は慌てませんでした。直後のキックオフから全員が集中してマイボールにつなげると、前半終了間際の28分、大方選手が今度は細かなステップを刻みながら左隅にトライ。試合後、キャプテンの中村桐十郎選手が「連覇へのプレッシャーがかかる中で、前半でいいゲームを作れたのがよかった」と語ったように、この得点でゲームの流れを取り戻した青森山田、後半にも2本のトライを加えて42対5で勝利。青森北を下し、5年連続の花園出場を決めました。

【新潟県】

同じ28日、3連覇を狙う開志国際と北越との間で行われた新潟県大会決勝は、最後まで目が離せない大熱戦となりました。降りしきる雨の中、前半は強力FWが自慢の北越が優位に立ちます。7分にFB中坪太智選手がPGを決めて3点を先制すると、18分にはモールを押し込んでトライ。前半を10対0で折り返します。

しかし、後半に入ると開志国際も反撃。激しくなる雨と同様、ボールを動かしながら果敢にトライを狙う開志国際、激しいディフェンスとモールを武器に立ちふさがる北越、両チームが持ち味を発揮して手に汗握る攻防が続きます。開志国際は12分、フィナウ・イサイヤ選手のトライで3点差に詰め寄りますが、北越は22分、再びモールを押し込むと最後はキャプテンのHO大橋武生選手がトライ。ゴールも決めて、10点差に突き放します。

開志国際も25分、7点を返しますが反撃もここまで。「強みのモールを生かす戦術を1年間かけて考えてきたことが優勝につながった。3年生が3年間積み上げきた分を、この60分間に出してくれた」と語った増田宇宏監督率いる北越が3点差で逃げ切って、25年ぶり2度目の花園への切符を手にしました。

【佐賀県】

28日、もう1試合は、佐賀県では圧倒的な強さで41大会連続出場中の佐賀工と、2021年の創部以来時間を重ねるごとに成長の後を見せている早稲田佐賀の対戦。選抜大会ベスト8、夏の7人制大会では初の全国制覇、全国でも屈指の戦力を有する佐賀工が試合開始から早稲田佐賀を圧倒します。開始2分、SO服部良太選手のトライで先制すると、その直後、今度はチーム一の快速ウイングの内田慎之甫選手が50メートル以上を走り切ってトライ。その後も圧倒的な個人の能力の高さを見せて得点を積み重ねていきます。

それでも早稲田佐賀は決して諦めません。突き刺さるようなタックル。体を張ったディフェンス。1年間の努力を感じさせる戦いぶりで食い下がります。しかし、後半は早稲田佐賀の体力が落ち始めて、さらにトライラッシュ。結局、佐賀工が前後半合わせて16本のトライを奪って、106対0で勝利。42大会連続52回目の全国大会出場を果たしました。

高校日本代表候補選手を数多く擁して10月に行われた国体でも決勝戦に進出。「新チームになったときに日本一という目標を立てた。さまざまところをもう一度見直して、ひとりひとりが自信を持って戦って、花園では優勝したい」と大和哲将主将が話した佐賀工。悲願の全国高校ラグビー大会制覇が叶うか注目が集まります。

【秋田県】

10月29日(日)には、全国大会最多優勝15回を誇る名門・秋田工と秋田中央による秋田県大会の決勝が行われました。3年連続の同じ顔合わせとなった決勝戦、先制したのは秋田中央。開始4分、門間奏汰選手からのキックパスを受けたウイングの加賀谷翔栄選手がトライ。2年続けて秋田工の前に涙をのんでいる秋田中央が5点のリードを奪います。

しかし、秋田工も10分、鍛え上げられてきた底力を見せます。バックス陣の早い連携から、最後はFB安田心平選手がトライ。ゴールも決めて7対5と逆転します。さらに24分、ラインアウトからのモールを押し込むと、HO小林慶伸選手がトライ。12対5とリードをひろげます。

それでも1トライ1ゴールで追いつける差。後半に入ると秋田中央が同点を狙って秋田工陣内深くまで攻め込みます。しかし、さすがは伝統校。粘り強く集中力の高いディフェンスで秋田中央に得点を許しません。最後まで規律の取れたディフェンスを見せた秋田工がこのまま逃げ切って、4年連続、最多となる71回目の全国大会出場権を手にしました。

【今後の予定】

続々と代表校が決定していく第103回の全国高校ラグビー大会。11月2日に沖縄大会のライバル対決、名護対コザによる決勝戦。11月3日(金・祝)には合同チームが初めて決勝に進出した富山大会、そして長野、石川、合同チームを結成して強豪の石見智翠館から26年ぶりのトライを狙う島根大会。11月4日(土)には、シード常連校の国学院栃木が出場する栃木。11月5日(日)には、茨城、大分で決勝戦が行われます。

【全国高校ラグビー大会 10月28日29日の各地区決勝戦の結果】

青森:青森山田42―5 青森北
新潟:北越 17-14 開志国際
佐賀:佐賀工 106-0 早稲田佐賀
秋田:秋田工 12-5 秋田中央

【今後の決勝戦組み合わせ】

▼11月2日(木)
沖縄:名護 対 コザ
▼11月3日(金・祝)
富山:富山第一 対 合同(砺波、高岡第一、砺波工、龍谷富山)
長野:飯田OIDE長姫 対 飯田
石川:日本航空石川 対 鶴来
島根:石見智翠館 対 合同(出雲、平田、松江高専、大社)
▼11月4日(土)
栃木:国学院栃木 対 作新学院
▼11月5日(日)
茨城:茗渓学園 対 清真学園
大分:大分東明 対 大分舞鶴