年末年始に東大阪市花園ラグビー場で行われる全国高校ラグビー大会。続々と代表校が決まる中、聖地を目指す戦いもクライマックスを迎えています。11月18日(土)、19日(日)には、全国でも注目の強豪同士の対決による決勝戦が行われました。

【兵庫県】強風の中での一戦 冷静に対応した報徳学園

 18日(土)に行われた兵庫県大会決勝は、去年の全国大会準優勝・報徳学園と関西学院、5年連続の同じ顔合わせとなりました。去年はノーサイド寸前のラストワンプレーで逆転ドラマが生まれた両チームの対戦。今年も立ち上がりから両チームの激しい闘志がぶつかり合います。コーナーフラッグが斜めにきしむほどの強風の中で行われたこの試合。先にペースをつかんだのは、風上の報徳学園。SO菊川迪選手がキックを有効に使って敵陣深くに侵入すると、5分にPR森下陽希選手が先制のトライ。11分にも1トライを加えて、14対0とリードを奪います。一方の関西学院もこのあと反撃。ひとりひとりの間隔を狭くして丁寧にパスをつなぎながら報徳陣内に入ると、15分すぎからは報徳をゴール前にくぎ付けにして攻め込みます。しかし、報徳はひとりひとりが体を張った粘り強いディフェンスで関学に得点を許しません。逆にピンチをしのいだ報徳は28分、ウイングの長谷川諒選手がタッチライン際を快走、フォローしたSH日比野陽穂選手がトライ。貴重な追加点で21対0とリードを広げて、前半を折り返します。

 サイドが入れ替わった後半、今度は風上に回った関西学院のペース。開始早々の2分、FW陣の力強い突進から、FL杉田奏斗選手がトライ。21対5と追い上げると、その後も報徳陣内深くに攻め込みます。それでも報徳学園は慌てませんでした。試合後、西條裕朗監督が「前半に3本目のトライをとれたことが大きかった。(大きく)リードしたことで、強風の中、落ち着いて戦えた」と語ったように、逆転には3チャンス以上が必要な関学がトライを狙ってどんどん仕掛けてくるのに対して、我慢強く、冷静に対応。規律の取れたディフェンスで関学に得点を許しません。そして、ロスタイムに突入した試合終了間際、交代で出場したプロップ陣がスクラムでプレッシャーをかけると、最後はウイングの長谷川選手がこの日2本目となるダメ押しのトライ。選手層の厚さと強風を味方につけるしたたかさを見せた報徳学園。26対5でライバル関西学院を下し、8大会連続49回目の花園出場を決めました。

【奈良県】29年連続で同じ顔合わせ モールを封じ込めた天理

 19日(日)には、29年連続の対戦となった御所実業と天理による奈良県大会の決勝戦が行われました。毎年、高校ラグビーファンを熱くする白と黒の対決。今年も両チームの緊張感が見ている側にも伝わってくる緊迫した展開となります。先制したのは、純白のジャージの天理。前半7分、この試合初めて御所実業陣内深くに侵入すると、ラインアウトからモールをうまく押し込んで、最後は持ち出したキャプテンの内田涼選手がトライ。御所のお株を奪うモールからの攻撃で、5点をリードします。先制点でペースをつかんだ天理、その後はスクラムでプレッシャーをかけて、得点に結びつけていきます。スクラムを押し込んでペナルティーを得ると、14分に山崎祥永選手がPGに成功。22分にも同じ形から、今度は40m以上のPGを決めて11対0とリードを広げます。一方、慎重に試合を進めすぎてなかなかペースがつかめなかった黒のジャージに身を包んだ御所実業。ここから思い切った攻撃で試合の流れを引き戻します。BK陣の果敢な仕掛けから天理陣内に攻め込むと、25分すぎからはトライを狙って何度も天理のゴールラインに迫ります。しかし、ここで天理がすさまじい気迫のこもったタックルを連発。前半終了間際にはインゴールにまでボールを持ち込まれますが、執念でグラウンディングを防ぎます。前半は11対0、天理のリードで折り返しました。

 それでも差は11点。我慢強く攻め続ける御所実業。後半も、10分すぎからはワンチャンスで逆転できる点差まで詰め寄るトライを狙って、天理陣内深くに攻め込みます。そして、絶対的な自信を持つモールからの攻撃でトライをとりにいきます。春の新人大会では天理を粉砕したモール。しかし、内田主将が「この1年、天理大学の方にも協力していただいて、コーチとも相談した上、自分たちで話し合いながらモール対策を磨いてきた」と話した天理。鍛え上げてきたフィジカルと、自分たちで考え積み上げてきたモールディフェンスで、御所実業に得意の形をつくらせません。FW陣だけでなくBK陣も加わって押し込もうとした御所実業のモールを防ぎ切ります。最後まで全員が集中力を切らさず、ライバル校の最大の武器であるモールを封じ込めた天理。後半の御所実業の反撃も無得点に抑えて、11対0で勝利。伝統校の底力を見せて、2年連続65回目の全国大会出場を決めました。

【神奈川県】実力校同士の対決 前に出る力強さを見せて圧倒する桐蔭学園

 同じ19日(日)に行われた神奈川県大会決勝は、春の選抜大会との全国大会2冠を狙う桐蔭学園と去年の県大会を制した東海大相模、実力校同士の5年連続の対決となりました。1年前に敗れてからこの試合をターゲットにチーム力を強化してきたという桐蔭学園。序盤から、この1年をかけて積み上げてきたラグビーを選手たちが確実に遂行していきます。開始2分、FB吉田晃己選手のPGで先制すると、強いあたりでプレッシャーをかけてくる東海大相模に対して、しっかりと体をあてて対応。ブレイクダウン(ボールの争奪戦)攻防、ボールを失った後の素早い反応で、相手を上回り攻撃を継続していきます。そして15分、その吉田選手が鮮やかな個人技を見せて東海大相模のディフェンスを切り裂くと、ゴールポストに直撃しながらも気迫のトライ。SO萩井耀司選手がゴールも決めて、10対0とリードを広げます。藤原秀之監督が「このトライでチームに勢いがついた」と話した桐蔭学園。ここから前に出る力強さを見せて、東海大相模を圧倒していきます。直後の16分、FW陣の素早い集散でボールを押し込んで東海大相模FW陣のディフェンスを遅らせると、最後はCTB白井瑛人選手が自らディフェンスの裏へけりこんだボールをインゴールで抑えてトライ。その後も確実に得点を加えて、前半で30対0と大きくリードを奪います。

 それでも桐蔭学園は攻撃の手を緩めません。後半に入ってもキックが狙える位置でペナルティーを獲得すると、手堅くPGを選択し、確実に得点差を広げていきます。最後まで、体を当てて前に出る、セットプレーでプレッシャーをかける、ブレイクダウンで素早く反応し続ける、といったこの1年積み上げてきたラグビーを遂行し続けた桐蔭学園が、7つのトライを奪って59対0の完勝。神奈川の王座を取り戻し、2年ぶり21回目の花園への切符を手にしました。


(MBSスポーツ解説委員 宮前 徳弘)