去年の12月27日に始まった第103回全国高校ラグビー大会もいよいよ大詰め。1月3日には準々決勝が行われて、ベスト4が決定しました。

【第1試合:桐蔭学園(神奈川)× 東海大大阪仰星(大阪)】

 高校ラグビー界をリードしてきた両雄の対決は、予想どおりのハイレベルな攻防となります。先にペースをつかんだのは桐蔭学園。新チーム結成以来鍛え上げてきた、選手1人1人が判断しながらチームとしての完成度を高めていくラグビーが機能。素早いサポートと前への推進力を見せて、17対0と大きくリードを奪います。しかし、さすがは東海大大阪仰星。桐蔭学園の判断の速さ、1人1人の強さに徐々に対応し、前半29分、仰星らしい素早くボールをつないでいく攻撃からPR山中勝晶選手がトライ。桐蔭学園からこの大会初めて得点を奪います。

 それでも桐蔭学園は慌てませんでした。その直後、ここが勝負とばかりにキックオフのボールに働きかけると、全員が集中した攻撃から、最後はCTB白井瑛人選手がトライ。24対5と突き放します。さらに後半9分には、FW陣がモールを押し込んでフリーの形を作った後、SO萩井耀司選手がこの試合2本目のドロップゴールに成功。多彩な得点パターンで27対5と着実に点差を広げていきます。それでも東海大大阪仰星はあきらめません。12分にWTB東佑太選手のトライで反撃の狼煙を上げると、再び22点差とされた試合終盤には、連続トライで10点差まで迫ります。しかしあと一歩及ばず、ついにノーサイド。落ち着いた試合運びで東海大大阪仰星を振り切った桐蔭学園が2年ぶりのベスト4進出を果たしました。
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 「すべての面で自分たちが甘かった。桐蔭学園の判断の速さ、押し込みの強さに対して前半は意識の意思統一ができていなかった」と話した東海大大阪仰星・和田寛大主将。また、湯浅大智監督は「全国トップレベルのチームとの本気の勝負を経験させることができなかった私の責任。いい経験になったが、それではダメ。花園は(経験を通して)成長するところでなく、勝負するところなので」と悔しさをにじませました。

 春先の新人大会、大阪の大会で敗れた状態から、優勝候補相手に後半は互角以上の戦いを見せた東海大大阪仰星。さすがは強豪校という片鱗を見せて花園を後にしました。そして、2年生の吉田琉生選手は「この悔しさを絶対に忘れない。きょうから次の新人大会に向けて全力で取り組みたい」と、涙を流しながらも早くも次のシーズンに向けて決意を新たにしていました。

【第2試合:中部大春日丘(愛知)× 佐賀工(佐賀) 】

 序盤からAシードの佐賀工が主導権を握ります。開始1分、6分と2つのトライで14対0とリードを奪います。一方の中部大春日丘も徐々に反撃。コンタクトの強さをベースに、しっかりと体を当てて前に進んでいく自分たちの戦いを取り戻すと、11分、20分とペナルティゴールに成功し、14対6と、8点差まで追い上げます。それでも、佐賀工は慌てません。試合の流れの中で重要な前半終了間際と後半開始直後に得点を加えて、24対6。このまま佐賀工が押し切るかと思われました。
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 しかし、ここで中部大春日丘のキャプテン福田大和選手がチームメートを鼓舞するビッグタックル。キャプテン渾身のタックルで勢いを取り戻した中部大春日丘、このあと強烈な追い上げを見せます。14分、チームの中で最も縦へ強い選手と信頼を寄せるNO8浜浦幸太郎選手のトライで13点差に迫ると、ロスタイムに突入した31分には、粘り強くボールをつないでLO中岡碧人選手がトライ。コンバージョンのゴールが決まれば、1チャンスで逆転可能な6点差。しかし、キックは右にそれてゴールならず。逆にラスト1プレイで佐賀工がダメ押しのトライを奪って熱戦に決着をつけました。

 中部大春日丘の宮地真監督は「開始直後に奪われた2つのトライが痛かった。それだけ佐賀工さんの集中力が素晴らしかった」と語ったうえで、「キャプテンを中心に、今まで指導してきた中で3本の中に入るぐらい成長を見せてくれたいいチームだった」と最後の最後まで奮闘したチームを称えました。

【第3試合:東福岡(福岡)× 茗渓学園(茨城)】

 これまで幾度となく名勝負を演じてきた両チームの対戦は、今までとは違ったお互いの持ち味が発揮された好勝負に。高い個人スキルをベースに抜群の決定力を誇る東福岡と、華麗なパス回しからのハンドリングラグビーのイメージが強い茗渓学園。しかし、この日は両チームFW陣のプライドが激突する戦いとなります。

 一進一退の攻防から前半8分、東福岡がSO井上晴生選手のトライで先制すると、茗渓学園も16分、ゴール前のモールをしっかりと押し込んでHO川村航平選手がトライ。5対5の同点に追いつきます。やられたらやり返す。25分、今度は東福岡のFW陣が力を見せます。茗渓ゴールラインまで5mの地点、相手ボールのラインアウトに対してFW陣が一体となってプレッシャーをかけると、そのまま押し込んでターンオーバー。このボールにSH利守晴選手が素早く反応してインゴールに飛び込みます。ゴールも決めて12対5。東福岡は後半12分にも力強い縦突進の連続から最後はLO坪根章晃選手がタックルをはねのけてトライ。19対5と差を広げます。

 それでも茗渓学園はあきらめません。強烈なタックルを連発して東福岡の猛攻を耐え忍ぶと、22分、大型選手をそろえた東福岡に対して密集サイドを攻め続けます。最後は「ビハインドの状況の中でも、全員が同じ絵を描けていた。BKだけでなく、茗渓はFWも強いというところを見せたかった」と語った川村選手が、この日2本目のトライ。19対10まで追い上げます。しかし、反撃もここまで。
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 「きょうは60分間ファイトし続けようと話をしていた。激しい試合だったが、落ち着いて体を当て続けることができたので、負ける気はしなかった」とキャプテンの高比良恭介選手が振り返った東福岡。26分にはさらに1トライを加えて26対10。粘る茗渓学園を下して準決勝に駒を進めました。
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 大型FW擁する東福岡相手に2トライを奪った茗渓学園・川村選手は「(BKだけでなくFWも力がある)違う茗渓を見せられた。(敗れてしまったが)自分(自身)はやり切れた。花園は楽しかった」と話すと、充実した表情とともに、花園を後にしました。

【第4試合:流経大柏(千葉)× 大阪桐蔭(大阪)】

 この一戦も、両チームがそれぞれの強みを発揮した手に汗握る展開になります。試合の主導権を握ったのは大阪桐蔭。強靭なフィジカルをベースに接点での強さを見せて、流経大柏陣内深くまで攻め込みます。開始直後にペナルティゴールで先制を許したものの、14分には流経大柏のゴールラインまで10mからモールを一気に押し込んでHO西野陽選手がトライ。ゴールも決めて7対3と逆転します。その後もFWで圧力をかけて攻め続ける大阪桐蔭。しかし、流経大柏も持ち味の粘り強いディフェンスで対抗し、さらに少ないチャンスを得点に結びつけていきます。22分にペナルティゴールで1点差に迫ると、前半終了間際の30分、攻め続けていた大阪桐蔭のミスをついて逆襲します。自陣10mライン付近でボールを確保した流経大柏のLO阿部虎生選手が素晴らしいランニング。次々とタックルをかわして大阪桐蔭のゴールラインに迫ります。このビッグプレーに周りの選手が反応。大きな展開から最後はFB丸岡大地斗選手がトライ。ゴールも決めて13対7と逆転して前半を終了します。

 一方、終始FW戦で優位に立っていた大阪桐蔭は落ち着いていました。後半の開始2分、接点でプレッシャーをかけて流経大柏陣内深くまで攻め込むと、再びラインアウトからのモールを押し込んで西野選手がトライ。13対12となって1点差に迫ると、プレッシャーのかかる難しい角度のキックを上田倭楓選手が決めて13対14と再逆転に成功します。その後もFWで圧力をかけてじわじわと攻め続ける大阪桐蔭。しかし、差はわずかに1点。1つのミスも許されない緊迫した展開が続きます。それでも、後半の29分、再び圧力をかけて、流経大柏の反則からゴール前5m地点でラインアウトのチャンスをつくると、再びモールを押し込んで西野選手がこの日3本目のトライ。6点に差を広げます。それでも1チャンスで逆転があり得る点差。流経大柏も最後のキックオフにかけてボールの確保を狙いますが、惜しくもノックオン。そのまま逃げ切った大阪桐蔭、Bシードからただ1校、大阪代表の底力を見せてベスト4に勝ち残りました。

【1月5日(準決勝)】

・桐蔭学園(神奈川) 対 大阪桐蔭(大阪)
・佐賀工(佐賀) 対 東福岡(福岡)
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 準決勝で優勝候補の桐蔭学園に挑む大阪桐蔭・林田力主将は「どこのチームと当たっても、自分たちのラグビーを貫けば勝てる自信はある。次の試合もフルファイトで戦いたい」と抱負を語りました。第2試合は東福岡と佐賀工で、Aシード同士の九州対決となりました。そして決勝戦は1月7日(日)午後2時から。準決勝を勝ち上がった2校による栄光の座をかけた最後の戦いが行われます。


(MBSスポーツ解説委員 宮前 徳弘)