プロ野球の阪神タイガースとオリックス・バファローズで活躍した野球解説者の能見篤史さんに、4月8日、両チームのことやメジャーで活躍する日本人選手について解説していただきました。

「オリックス時代に投げていた位置に戻していつも通りに」

―――まずは、メジャーについてです。日本時間の4月7日、カブス戦に先発したドジャースの山本由伸投手がメジャー初勝利を挙げました。5回を投げて被安打3で、8奪三振、2四球という内容でした。能見さんは『グラブの位置修正で調子アップ』と見ているようですね?
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「そうですね。韓国で投げたときのセットポジションのグラブの位置は、ベルトのところにありました。もともとオリックス時代はここ(胸の前あたり)でしたが、クセが見やすいとか、握りがばれやすいっていうので、一旦ベルトの位置にもっていったんです。ベルトの位置のセットになると、投げにいくときに、投げる方の肩がちゃんと上がってこない場合があります。そうなると、低い位置のまま投げちゃうので、シュート回転したり、弱いボールになるんです。オリックス時代に投げていた位置に戻すことによって、ちゃんといつも通りのところに投げられるようになったので、しっかりと自分のポジションで投げられるようになったんですよ。カーブ自体も縦に落ちてくるようなイメージですけど、腕の位置が下がるとカーブは横に曲がり出すんです」

―――日本時間の8日にはカブスの今永昇太投手がドジャース戦に先発。試合は約3時間の降雨中断があり、4回を投げて被安打2、無失点の内容で降板しました。1日のデビュー戦では6回を投げて被安打2、9奪三振、無失点で初勝利を挙げていました。今永投手は絶好調のようで、能見さんは『ストレートの質が◎』という見方ですね?

「日本にいるときもストレートがすごく良かったんです。メジャーに行ったらね、ボールを動かす、ストレートでも動かすのが主流なんですけど、今永投手の場合は回転数ときれいなボールっていうので、どっちかというと“吹き上がる”まっすぐなんです」

―――そう言えば、能見さんは山本投手とやり取りしているそうですね?

「たまにですけど。あんまりすると、向こうも律儀な方ですぐ返ってくるので。基本的に気になったことだけしか僕は。(山本選手の)表情を見ていただいたら、楽しくやっていると思います」

阪神タイガースのチーム状況はどう見る?

―――次は、阪神タイガースについてです。4月5日からの東京ヤクルトスワローズとの3連戦は、今シーズン初の2連勝&同一カード勝ち越し。青柳晃洋投手、大竹耕太郎投手、才木浩人投手、先発が頑張ったなということですか?

「もともとタイガースは投手陣がいいので、ゲームを作ってくれると、いい試合になっていくんです。基本的にあんまり心配していないです」

―――チームは開幕ダッシュとならなかったと思いますが、心配しなくて大丈夫でしょうか?

「基本的にね、みんなしたいんですよ、開幕ダッシュ。なかなかうまくいかなくても、阪神自体は去年日本一になっているということで、どういう戦い方をしたらどういう戦いができるっていうのもある程度選手がわかっているので、戻れる立ち位置はちゃんと持っている」

―――9試合を終えて、4勝5敗で3位。ただ、ホームラン数は9本で12球団中で1位です。ホームランの数についてはいかがですか?

「ホームランの数はね、あるにこしたことはないですけど、やっぱり(ホームが)甲子園っていうところで、繋いでいくっていう部分は非常に今度、大事になってくるかなと」

―――5日の試合では、延長10回に佐藤輝明選手が1号ソロホームラン。いわゆる“確信歩き”をしていましたが、こうした確信歩きはチームに何か良い影響はありますか?

「ホームラン自体がまず良い影響を与えるのと、どこの場面で打つかによって全然違う。こうやって打ってくれるっていうことは非常にチームとしても士気が上がりますし、勇気をもらえるので」

―――3日に特大の2号2ランを放った森下翔太選手について、能見さんは『投手にとって一番嫌なタイプの選手』と評価していますが、どういうことでしょうか?

「ある程度、ローテーションのピッチャーって何回も対戦するので、要は配球的に、ちょっと意識付けをしたりとかいろいろするんですけど、森下選手の場合ってあんまりこれが効かない。得点圏にランナーがいると集中力がどんどん高くなっていくので、もうそれ自体が通用しなくなるんですよ。こっちがエサまいて、ここ大丈夫だろうって投げたところが、向こうからしたらもう全然、打ちやすいところに投げている感覚なのかな。(投手側は)データとかを見て、あそこは苦手と頭に入れるが、(森下選手は)得点圏で集中力が増したら、そこは苦手でもなくなる」

―――森下選手の今シーズンのここまでの成績は、打率が1割6分7厘と低いですが、ホームラン2本で打点が7ということです。去年から森下選手がホームランを打った試合は11戦10勝1敗です。

「いいところで打っているからこうなるんです」

―――チャンスに集中力が高まって結果を出しているので、チャンスでないときも集中力が保てたらもっとすごい選手になりますよね?

「そうですね。でもそこってなかなか難しくて、自分がやるべきことって何だろうかと考えたときに、ランナーのいないときはもちろん長打も狙いにいくし、っていうところで待ち方が変わる。なかなかね、打てない要因ではありますね」

オリックス・東投手は無傷の8連勝!すごさとは?

―――オリックス・バファローズについてもお聞きします。4月2日からの6試合で2勝4敗。この1週間は負け越しとなりましたが、どのようにご覧になりますか?

「ちょっと元気がないのは確かに見えるんですけど、まだ始まったばかりで、まだまだこれからだと思います」

―――4月4日の埼玉西武ライオンズ戦では、先発の東晃平投手が勝利。東投手は兵庫県出身の24歳で、2017年育成ドラフト2位で入団。先発投手でデビュー後、無傷の8連勝となりました。能見さんは東投手のどこがすごいとお考えですか?

「もともといいピッチャーだったんですよ。体も大きくしたことによって球速が格段に上がったんです。となると、他の球種も全てワンランク上になったので、バッターと勝負できるボールが全てにおいて増えたっていうところで、やっぱりこういう結果に繋がっていますね」