5月6日~12日の阪神タイガースは2勝3敗。一時は首位陥落となりましたが、再浮上しています。12日の試合で完封勝利を挙げた才木投手や、気になる“虎の守護神”たちの状態などについて、13日、能見篤史さんが解説しました。
『パワー勝負』で完封勝利の才木投手 中学生時代に能見氏は会っていた!?
―――5月10日(金)~12日(日)の阪神は、横浜DeNAベイスターズとの3連戦で、2勝1敗でした。12日は先発の才木投手が完封。1対0で勝利しました。才木投手は素晴らしいピッチングでしたね?
「はい、もちろん、言うまでもなく。前日(11日)は乱打戦で、才木投手は見てるはずなんですけど、そんな中で自分のピッチングというか、コースを狙うのではなくて力で。自分の持ってるもので勝負していく、そういう姿勢がしっかり出ていましたので、まあ見事ですよね」
―――才木投手は4勝目。ヒーローインタビューでは『もうちょっと点がほしかったですね』と冗談まじりに話していました。能見さんもご経験があると思いますが、1対0でなかなか点が入らないというのは、ピッチャーとしてはどんな心境ですか?
「1人ランナーが出ると雰囲気がガラッと変わるというか、2アウトから1人ランナーを出すだけでも、すごくプレッシャーがかかりますね。気を張ってないと無理ですね」
―――「早く点を取ってくれ!」と思うものですか?
「それはもう、毎試合思っています」
―――能見さんは12日の才木投手について、「最大の持ち味である『パワー勝負』でバッターをねじ伏せていた」という見解だと。トミー・ジョン手術を乗り越えての活躍ですが、いかがですか?
「才木投手は進化の途中で、まだまだ伸びる要素があります。『真っ直ぐで押していける』というのが彼のスタイルで、12日は状態もそれなりに良かったと思いますし、DeNA打線に対してしっかりと勝負できたところが大きいですね」
―――才木投手の活躍は、実は“能見さんのおかげ”でもあるんですよね?能見さんの現役時代、2013年オフに行われた野球教室で、当時中学3年生の才木投手を能見さんが“指導”していたと。そういったご縁があったんですね?
「指導というか、たまたま野球教室に来ていて、ちょっと話をしたぐらいなんですけど、キャッチボールをしてる姿を見たときに、『こんないいピッチャーがいるんだ』というのは思いました。どこかの高校から話が来ているだろうなと思って話しかけたら、『いや、どこも来ていません。須磨翔風高校に行きます』と言っていました。その場には僕以外にも阪神関係者の方もいたので、すぐスカウトの方に『ちょっと須磨翔風におもしろいピッチャーが入るので見ておいてください』と言いました」
―――才木投手は当時から背が高くてフォームがきれいだったと。将来活躍できそうな片鱗はありましたか?
「中学3年生のときに身長が180cmあったので、まだ背は伸びるじゃないですか」
―――高校時代は全国大会に出られませんでしたが、プロでこの活躍ですからね。才木投手の力投もあって阪神は再び首位に。いかがでしょうか?
「なかなかね、やっぱり得点っていうところが、どうしてもまだ(打線が)湿りがちなので、本当に投手陣がしっかり頑張っている。2安打で勝つこともあれば、頑張ってピッチャーが抑えていても負けることはあるので、これはもう、しばらく続くのかなと思います」
打たれたゲラ投手&岩崎投手は「全然問題ない」
―――そんな中、皆さんが気がかりなのは「虎の守護神」の状態ではないでしょうか。ゲラ投手は5月8日の広島東洋カープとの試合で8回に登板しましたが、フォアボールから2失点で、初のイニング途中降板。そして岩崎投手は5月11日の横浜戦で2点リードの8回にマウンドに上がりましたが、フォアボールからホームランで同点。その後、ソロホームランで逆転を許しました。能見さんの見解としては、「この2人への負担は大きいが、本当によくやってくれている」ということですね?
「岩崎投手は何年50試合以上投げているかっていうのを考えると、トータルしたら本当に安定しているんですよね。たまにはありますし、9月の優勝争いでこれになると困るんですけど、まだ前半なので全然問題ないです。ゲラ投手は日本に初めて来て、ここから梅雨があって夏があってね、もう初めてのことだらけなんですよ。それでも強いボールをしっかり持っていますし、守備もね、もともと野手なので、例えばバント処理の送球ミスとかも全くない選手です。あとは気温とコンディショニングに気をつけながらやってもらえたら全然問題ない。たまには打たれることあります。でも岡田さんね、フォアボールをどっちかっていうと嫌う方なので。それがどうしても失点になるっていうところは今後気をつけていけば問題ないので、全然心配していないです」
―――横浜のクリーンナップ(3番・宮崎選手、4番・牧選手、5番・筒香選手)は強力だと思いますが、能見さんも対戦するとしたら嫌ですか?
「嫌です。僕、筒香選手にめっちゃ打たれたんです」
―――岩崎投手は毎年登板数も多いですが、これだけ活躍し続けられることはすごいことですよね?
「すごいですよ、本当にすごいですよ。みんなそこをあんまりピックアップしてくれないので。やって当たり前って見られるんですけど、そこまでに至るまでにすごいコンディショニング努力があるので」
投手は「梅雨時にかけて一旦、疲労がたまってくるタイミング」に
―――さて、今シーズンが始まって約1か月半が過ぎました。梅雨前ですが、阪神はバットがちょっと湿りがち。そんな中で踏ん張っている投手陣について、能見さんは「梅雨時にかけて一旦、疲労がたまってくるタイミング」だと指摘。これはどういうことでしょうか?
「開幕して約2か月というところで、ちょっとね、シーズンの慣れっていうのもあって、気を抜くわけじゃないんですけど、ちょっと慣れてくると、『意外と疲れているんだ』っていう時期になってくるんですよ。そこに梅雨が入ってくるので、余計にそれが感じられるっていうのはある。僕は梅雨が結構苦手だったでんすよ。毎年いろんな対策をするんですけど、やっぱり体がちょっとだるくなったりとかっていうのは多いので」
―――投手は踏ん張りどきでもありますが、打者の方は「目が慣れてきて、対戦数も増えてくるので、やや打者有利になるかも」という見解ですね?
「これはもうピッチャーの質がどうしてもちょっとずつ落ちてくるっていうところで、バッターが有利になってくるんですけど、ここにね交流戦っていうのが入ってくるんです」
―――5月28日からの交流戦で気分転換ができるのではと?
「対戦チームが同リーグのチームじゃなかったり、新しく見る選手であったりというところでちょっと刺激的な部分もあるので、その辺でみんな状態を上げてくれたらいいかなと思いますね」
オリックスは宮城投手の離脱が痛い? 早く本調子になってほしい野手は…
―――オリックス・バファローズについても能見さんに聞いていきます。チームは2連敗中で4位。借金4という現状です。そうした中で宮城投手の離脱は相当痛いということですね?
「(けがの箇所は)大胸筋なので、投げられないんですよ、休んでいる間。ここをなおさないといけないので先に。そこからまた投球練習を再開していくと。試合数も下(二軍)で重ねていって、ある程度いい状態で投げられるようになって上がるというところで、期間は軽症だったら早いかもしれないですけど、1か月以上はかかってしまうので。やっぱりその辺は痛いかなと」
―――宮城投手の昨シーズンからの成長というのはいかがでしょうか?
「今年に限っては球速自体もすごく上がっている。山本由伸投手が抜けて自分がやるっていう意気込みも感じましたし…。そこに筋力がちょっと耐えきれなかったっていうところでね」
―――そして打者については、昨オフに広島からオリックスに移籍した西川選手に早く本調子になってほしいと。打率が2割ということで、ちょっと苦しんでいますね?
「西川選手で言うと、セ・リーグからパ・リーグに入ったというところで、対戦ピッチャーが“初めまして”の選手がすごく多いんですよ。いろんな情報を聞いて『こういうボールを投げるよ』って言われても、実際にどれだけ曲がるのかとかも、(打席に)立ってみないとわからない。あと、攻め方ですね。その辺もわからないので、本当に手探りの状態なんですけど、(5月下旬に)交流戦が始まる。今度は逆に知ってる選手と対戦していくので、うまく上がってくるんじゃないかなと見ています」